静電気力を用いたC.elegansの高速跳躍

「1. はじめに」Caenorhabditis elegans(以下単に線虫)は多細胞生物で最初にゲノム配列が決定された種であり, また単一細胞である受精卵が分裂し成体になるまでの系譜が明らかにされている, 実験室内で最もよく調べられているモデル生物の一種である. しかしながら, 線虫が野外でどのような生活を送っているかはほとんど明らかにされていない. 特に, 線虫は地球上のさまざまな環境で生息している汎存種であるが, 体長1mmほどで足や羽といった運動器官をもないこの生物がどのように世界中に広まったのかは謎となっている. 本研究では, 線虫の分散行動に関しうるある特徴的な振る舞い(周りの静電...

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Published in生物物理 Vol. 65; no. 2; pp. 74 - 76
Main Authors 佐藤勝彦, 西上幸範
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生物物理学会 01.04.2025
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ISSN0582-4052

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Summary:「1. はじめに」Caenorhabditis elegans(以下単に線虫)は多細胞生物で最初にゲノム配列が決定された種であり, また単一細胞である受精卵が分裂し成体になるまでの系譜が明らかにされている, 実験室内で最もよく調べられているモデル生物の一種である. しかしながら, 線虫が野外でどのような生活を送っているかはほとんど明らかにされていない. 特に, 線虫は地球上のさまざまな環境で生息している汎存種であるが, 体長1mmほどで足や羽といった運動器官をもないこの生物がどのように世界中に広まったのかは謎となっている. 本研究では, 線虫の分散行動に関しうるある特徴的な振る舞い(周りの静電場を利用して, 高速に跳躍するという行動)を紹介する. 「2. 線虫のライフサイクル」線虫の跳躍行動は, 線虫のライフサイクルと密接に関係しているため, 以下にその概要を説明する. 線虫は雌雄同体であり, 自分自身だけで受精卵を作ることができる.
ISSN:0582-4052