補体B因子の新規変異が同定された膜性増殖性糸球体腎炎の家族例

【はじめに】近年, 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)の組織学的特徴よりC3 glomerulopathyという概念が提唱され, 補体第二経路の異常に伴う発症が注目されている. 今回我々は, 第二経路の活性に関わる補体B因子(complement factor B:CFB)に新規変異を認め, 組織学的にC3 glomerulopathyの特徴を有した家族内発症のMPGN症例を経験したので報告する. 【症例】10歳女児. 2010年の学校検尿で初めて血尿, 蛋白尿を指摘され, 2012年4月に当科紹介入院となった. ネフローゼ症候群を呈しており, C3優位の低補体血症(C3 20mg/dl, C4...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 26; no. 2; p. 309
Main Authors 今村秀明, 田中悦子, 織田真悠子, 此元隆雄, 布井博幸, 吉田瑶子, 藤村吉博, 宮田敏行, 久野敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児腎臓病学会 15.11.2013
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Summary:【はじめに】近年, 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)の組織学的特徴よりC3 glomerulopathyという概念が提唱され, 補体第二経路の異常に伴う発症が注目されている. 今回我々は, 第二経路の活性に関わる補体B因子(complement factor B:CFB)に新規変異を認め, 組織学的にC3 glomerulopathyの特徴を有した家族内発症のMPGN症例を経験したので報告する. 【症例】10歳女児. 2010年の学校検尿で初めて血尿, 蛋白尿を指摘され, 2012年4月に当科紹介入院となった. ネフローゼ症候群を呈しており, C3優位の低補体血症(C3 20mg/dl, C4 16mg/dl, CH50 19U/ml)を認めた. 腎生検ではびまん性の高度メサンギウム増殖と分葉化, ならびに基底膜の二重化を認めた. 免疫染色では係蹄壁にC3が優位に沈着し, 電顕所見と併せてMPGN I型と診断した. 患児の母親は, 小児期にMPGNの診断でステロイドによる治療歴があり, その後の受診は途絶えていたが, 患児と同様にC3優位の低補体血症(C3 15mg/dl, C4 17mg/dl, CH50 14U/ml)と蛋白尿を認めた. また, 患児の兄にもC3優位の低補体血症を認めたが, 尿所見は正常であった. 家族内発症から遺伝的要因の関与を疑い, 患児, 両親, 兄, 妹のそれぞれにおいて, 補体第二経路活性に関わるCFH, CFI, CFB, C3等の遺伝子解析を行った. その結果, 患児, 母親, 兄にCFB p.Ser367Argのヘテロ変異を, また, 患児, 母親, 妹にCFI p.Arg201Serのヘテロ変異を認めた. 【考察】臨床症状と遺伝子解析の結果から, 患児と母親のMPGN発症にCFB p.Ser367Arg変異が関与していることが強く疑われた. 非典型的溶血性尿毒症症候群においては, 現在までにCFB変異による発症が3家系報告されているが, CFB変異によるMPGN発症の報告例はない. CFI p.Arg201Serについては, 本邦健常者で数%にみられる変異であるが, 家族内ではMPGNを発症した患児と母親のみがCFB, CFIの両方の変異を有しており, 修飾遺伝子である可能性が考えられた.
ISSN:0915-2245