4. シスプラチン投与後に生じた低ナトリウム血症の1例

【はじめに】シスプラチン(CDDP)投与後の合併症として低Na血症がみられることがある. 原因として, SIADHやRenal Salt-Wasting Syndrome(RSWS)などが報告されているが, 両者は治療方針が異なるために臨床所見の相違などから鑑別する必要がある. 今回, 脳腫瘍に対してCDDPを用いた化学療法後に低Na血症を呈した1例を経験したので報告する. 【症例】6歳女児. 多尿と頭痛を主訴に受診し, 頭部CTでトルコ鞍上部腫瘍と脳室拡大を指摘された. 生検で下垂体胚細胞腫瘍と診断し, ホルモン補充(ヒドロコルチゾン・甲状腺ホルモン・DDAVP)を開始. 1クール目の化学療...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 25; no. 1; p. 87
Main Authors 藤丸季可, 山田浩, 細川悠紀, 依藤亨, 岡田恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児腎臓病学会 15.04.2012
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【はじめに】シスプラチン(CDDP)投与後の合併症として低Na血症がみられることがある. 原因として, SIADHやRenal Salt-Wasting Syndrome(RSWS)などが報告されているが, 両者は治療方針が異なるために臨床所見の相違などから鑑別する必要がある. 今回, 脳腫瘍に対してCDDPを用いた化学療法後に低Na血症を呈した1例を経験したので報告する. 【症例】6歳女児. 多尿と頭痛を主訴に受診し, 頭部CTでトルコ鞍上部腫瘍と脳室拡大を指摘された. 生検で下垂体胚細胞腫瘍と診断し, ホルモン補充(ヒドロコルチゾン・甲状腺ホルモン・DDAVP)を開始. 1クール目の化学療法として, CDDP(90mg/m2×1回), CPA(1000mg/m2×3回), VP-16(100mg/m2×5回)を投与した. CDDP投与4日後, Cre 1.19mg/dl, 尿中β2MG 12.17mg/lと上昇. 5日後, Naは131mEq/lで, Creは改善傾向であったために輸液中止しDDAVPを減量したところ, 翌日Naは122mEq/lと低下(Cre 0.80mg/dl, 尿中Na 123mEq/l, FENa 3.2%)した. RSWSによる低Na血症と考え, 3%食塩水によるNa補充を開始したが, 半日以上血清Na値の上昇が得られず電解質管理に苦慮した. 3%食塩水は血清Na値やFENaの推移をみながら7日間の投与を要した. 【まとめ】CDDP投与時は, 近位尿細管障害による再吸収阻害や腎障害軽減目的で行われるHydrationの影響により, 水・電解質異常を生じやすいとされている. 本症例の低Na血症は, CDDP投与数日後にみられ, 下垂体腫瘍でヒドロコルチゾンやDDAVP補充中でもあり, RSWSか水中毒かSIADHかCSWSか副腎不全かなどの鑑別を要した.
ISSN:0915-2245