9. 腎生検を契機に肝腫瘍を伴う門脈大循環シャントを発見された膜性増殖性糸球体腎炎の1例

【はじめに】門脈大循環シャントは稀な疾患であり, 肝腫瘍や腎炎の合併例が報告されている. しかし, 腎炎と肝腫瘍をともに認める報告例は極めて稀であり報告する. 【症例】4歳女児. 新生児黄疸, 心室中隔欠損症の既往がある. 3歳児健診で血尿蛋白尿を指摘され, 腎生検目的に受診した. 身体所見では, 肝2横指触知. 尿蛋白75mg/dl, 尿中赤血球5~9/HPF, TP5.1g/dl, Alb3.1g/dl, T-cho222mg/dl, 腎機能障害は正常, 軽度肝機能障害を認めた. 低補体はなく, 肝炎ウイルスは陰性であった. 腎生検所見では, びまん性に糸球体基底膜の肥厚と二重化を認め,...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 22; no. 2; pp. 242 - 243
Main Authors 飯田厚子, 秋岡祐子, 服部元史, 金子芳, 久野正貴, 村山圭, 高柳正樹, 杉原茂孝, 山口裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児腎臓病学会 2009
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Summary:【はじめに】門脈大循環シャントは稀な疾患であり, 肝腫瘍や腎炎の合併例が報告されている. しかし, 腎炎と肝腫瘍をともに認める報告例は極めて稀であり報告する. 【症例】4歳女児. 新生児黄疸, 心室中隔欠損症の既往がある. 3歳児健診で血尿蛋白尿を指摘され, 腎生検目的に受診した. 身体所見では, 肝2横指触知. 尿蛋白75mg/dl, 尿中赤血球5~9/HPF, TP5.1g/dl, Alb3.1g/dl, T-cho222mg/dl, 腎機能障害は正常, 軽度肝機能障害を認めた. 低補体はなく, 肝炎ウイルスは陰性であった. 腎生検所見では, びまん性に糸球体基底膜の肥厚と二重化を認め, 蛍光抗体法では, 糸球体係蹄に沿ってIgM>IgA, IgGが沈着し, C1qは軽度陽性, C3の沈着は明らかではなかった. 電顕ではメサンギウム域に高電子密度沈着物を認め, mesangial interpositionがみられた. 膜性増殖性腎炎と診断したが, 糸球体にC3の沈着が優位でないことから, 二次性の腎炎を疑い全身検索を行った. 腹部CTで, 肝臓を占拠する腫瘤を認め, ガラクトース負荷試験でガラクトース, 総胆汁酸, アンモニアの上昇を認めた. 造影3D-CTで肝外門脈を認めず, 下腸間膜静脈と脾静脈から直接右房への還流を認め, 同時に右肝腫瘍が確認された. 肝腫瘍生検では悪性所見は認めず, 限局性結節性過形成様の肝腫瘍が合併した門脈欠損に伴う門脈大循環シャントおよびこれに併発した腎炎と診断した. 【考察】門脈欠損に伴う門脈大循環シャントと腎炎合併の報告は少なく, 先天性の門脈血行異常と腎炎の合併は調べうる限り7例が報告されているのみである. また, 同時に肝腫瘍も合併した報告例はこれまで1例のみで, 本症例はこれまでの最少年齢であった. シャント形成に伴う肝内での免疫複合体の除去障害が, 腎炎発症に関与した可能性があると考えた.
ISSN:0915-2245