5. 急性リンパ性白血病の治療終了後に腎機能低下をきたした1例

症例は腎機能低下発見時に11歳であった女児. 2003年8月頃にT-ALLを発症, 腫瘍崩壊症候群と推定される腎不全を認めていたが, 輸液療法のみで消失しており, その後は尿所見も正常化していた. 化学療法導入後早期にPRESを発症したが, 原病の寛解導入に成功し, 2005年10月に化学療法を終了, 神経学的後遺症もない. その後, 学校検尿異常は指摘されていなかった. 当科血液腫瘍外来で経過観察中であり, 2008年2月の定期受診時の血液検査では血清クレアチニンの上昇を認めず, 2月後半に1日のみ感冒症状を認めていた. 2008年3月中旬より食欲不振と褐色尿を認め, 4月の定期受診時に血尿...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 22; no. 1; pp. 78 - 79
Main Authors 宮井貴之, 綾邦彦, 磯部智香子, 宮村能子, 茶山公祐, 森島恒雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本小児腎臓病学会 2009
Online AccessGet full text
ISSN0915-2245

Cover

More Information
Summary:症例は腎機能低下発見時に11歳であった女児. 2003年8月頃にT-ALLを発症, 腫瘍崩壊症候群と推定される腎不全を認めていたが, 輸液療法のみで消失しており, その後は尿所見も正常化していた. 化学療法導入後早期にPRESを発症したが, 原病の寛解導入に成功し, 2005年10月に化学療法を終了, 神経学的後遺症もない. その後, 学校検尿異常は指摘されていなかった. 当科血液腫瘍外来で経過観察中であり, 2008年2月の定期受診時の血液検査では血清クレアチニンの上昇を認めず, 2月後半に1日のみ感冒症状を認めていた. 2008年3月中旬より食欲不振と褐色尿を認め, 4月の定期受診時に血尿と腎機能障害を指摘され, 4月4日当科入院. 入院時に尿量減少や浮腫, 高血圧は認められず, 肉眼的血尿と蛋白尿を認めた. 血清Cr 1.97mg/dl, Hb 10.1g/dl, 24時間CCr 30ml/min/1.73m2, シスタチンC 2.71mg/l, 血清免疫学的には診断的に有意な所見を認めなかった. 腎組織所見は光顕では約半数の糸球体に管内性増殖を認め, 間質にはリンパ球の集簇巣が見られ尿細管への細胞浸潤や近位尿細管上皮に軽度の萎縮を認めた. 免疫染色ではIgA, IgG, C3, Fibgの沈着を認めた. 急性糸球体腎炎に準じて安静, 食事療法を行った. 肉眼的血尿が入院後約2週間続いた. 貧血は入院後も進行し, 輸血とエリスロポエチン補充を行った. 抗炎症・免疫抑制療法は行わずに, 徐々に腎機能は改善しており, 現在, 当科腎臓外来で経過観察している. 臨床像と組織像に解離を認めるのは, 急性糸球体腎炎に加えて化学療法により軽度の腎機能障害が基礎状態として存在していたためと推測している.
ISSN:0915-2245