犬声帯各部におけるsuperoxide dismutase(SOD)活性の検討―電子スピン共鳴スピントラッピング法による測定
「I. 緒言」 声帯は高速振動体であり, 前後軸においても特徴のある層構造を示している. すなわち, 粘膜固有層の浅層は膜様部中央で最も厚く, 前後で薄く, 中間層はその逆となっており, 深層は後ろほど厚いなど, 声帯振動に際しての機械的損傷が起こりにくい構造となっている1). しかし, 血管循環障害説2)が一つの成因として考えられている声帯ポリープを始めとした疾患は, 最も可撓性に富んだ声帯膜様部中央に発生するものが多いが, なぜこの部分に発生するかの詳細は不明である. 最近, 脳や心筋において, 虚血-再灌流時にsuperoxide(O2-)等のフリーラジカルが発生することが報告されている...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 94; no. 5; pp. 712 - 765 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本耳鼻咽喉科学会
20.05.1991
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Summary: | 「I. 緒言」 声帯は高速振動体であり, 前後軸においても特徴のある層構造を示している. すなわち, 粘膜固有層の浅層は膜様部中央で最も厚く, 前後で薄く, 中間層はその逆となっており, 深層は後ろほど厚いなど, 声帯振動に際しての機械的損傷が起こりにくい構造となっている1). しかし, 血管循環障害説2)が一つの成因として考えられている声帯ポリープを始めとした疾患は, 最も可撓性に富んだ声帯膜様部中央に発生するものが多いが, なぜこの部分に発生するかの詳細は不明である. 最近, 脳や心筋において, 虚血-再灌流時にsuperoxide(O2-)等のフリーラジカルが発生することが報告されている3)4). 発生したフリーラジカルは, 最初の虚血段階より血流再開時に爆発的に急増しいわゆる再灌流障害(reperfusion injury)といわれる重篤な壊死などの病変を引き起こす. このフリーラジカルの消去系の一つであるsuperoxide dismutase(SOD)の活性濃度を電子スピン共鳴(electron spin resonance, ESR)スピントラッピング法を用いて定量し, 間接的にフリーラジカルの存在を証明する方法が近年開発されてきた5)6). |
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ISSN: | 0030-6622 |