B1-6-1 当科における重複癌症例の検討

一般に重複癌症例は単独の口腔癌症例よりも予後が悪いとされている. 今回われわれは当科で加療を行った口腔扁平上皮癌症例の内, 同時性あるいは異時性重複癌患者について, 臨床的特徴および予後について検討を行った. 対象は1997年から2006年までの10年間に当科で加療を行った口腔扁平上皮癌一時症例中, 重複癌を認めた43例を対象とした. 結果は年齢46~85歳(平均64歳)で, 性別は男性35例, 女性8例であった. 原発部位は舌と下顎歯肉が13例で最も多く以下, 口底8例, 頬粘膜4例, 軟口蓋3例, 上顎歯肉2例であった. 重複癌の部位は食道が20例と最も多く以下, 胃6例, 下咽頭4例,...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 20; no. 3; p. 198
Main Authors 唐木田一成, 太田嘉英, 青木隆幸, 山崎浩史, 伊澤和三, 大鶴光信, 倉林宏孝, 佐々木剛史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔腫瘍学会 2008
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ISSN0915-5988

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Summary:一般に重複癌症例は単独の口腔癌症例よりも予後が悪いとされている. 今回われわれは当科で加療を行った口腔扁平上皮癌症例の内, 同時性あるいは異時性重複癌患者について, 臨床的特徴および予後について検討を行った. 対象は1997年から2006年までの10年間に当科で加療を行った口腔扁平上皮癌一時症例中, 重複癌を認めた43例を対象とした. 結果は年齢46~85歳(平均64歳)で, 性別は男性35例, 女性8例であった. 原発部位は舌と下顎歯肉が13例で最も多く以下, 口底8例, 頬粘膜4例, 軟口蓋3例, 上顎歯肉2例であった. 重複癌の部位は食道が20例と最も多く以下, 胃6例, 下咽頭4例, 乳腺と大腸が3例ずつ, 中咽頭, 肺, 肝臓が2例だった. 発現時期は同時性が16例, 異時性が34例だった. この中で食道については20例中13例が同時性であり上部消化管内視鏡検査により全て発見された. 5年累積生存率は69.5%だった. また発現時期による5年累積生存率は異時性76.4%であるのに対し同時性は55.6%と予後は不良だった. 予後不良症例をStage別にみるとStage Iでは3例が死亡しているが全て重複癌死であった. Stage IIは4例が死亡したが, 原病死が3例あり, 他因死が1例であった. Stage IIIおよびIVaでは原病死と重複癌死の両方がみられた. 食道の重複癌20例について調べたところEMRのみで治療を行った症例は11例で内8例は生存しており, 死亡した3例は何れも原病死だった. またEMRに放射線や手術を行った症例は何れも生存しているが, 化学療法や外科療法を行った症例は予後不良例が多い結果となった. 今回の検対により上部消化管内視鏡検査の有用性と早期食道癌のEMRによる治療効果が認められ, 重複癌の早期発見が治療成績の向上につながることが示唆された.
ISSN:0915-5988