B1-1-2 後方への浸潤なくルビエールリンパ節に転移を生じた口腔癌3例

[目的]外側咽頭後リンパ節は後咽頭隙内で椎前筋の外側, 内頸動脈の内側に位置しており, 鼻副鼻腔, 軟口蓋, 上・中咽頭からリンパ流を受け, 内頸静脈に輸出リンパ管を送るリンパ節で, その最上方のものはルビエールリンパ節と称される. ルビエールリンパ節へは咽頭癌からの転移がしばしばみられるが, 口腔癌の転移はまれとされている. 今回, 後方への浸潤がないにもかかわらずルビエールリンパ節に転移を生じた口腔癌3例を経験したので報告する. [症例]症例1は58歳, 男性. 他院で左上顎側切歯歯根嚢胞の診断のもと摘出術が施行された. 摘出標本にて扁平上皮癌と診断されたため, 当科にて上顎骨部分切除術お...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 20; no. 3; p. 191
Main Authors 重田崇至, 梅田正博, 南川勉, 片岡智子, 小國晶子, 高橋英哲, 澁谷恭之, 横尾聡, 古森孝英
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔腫瘍学会 2008
Online AccessGet full text
ISSN0915-5988

Cover

More Information
Summary:[目的]外側咽頭後リンパ節は後咽頭隙内で椎前筋の外側, 内頸動脈の内側に位置しており, 鼻副鼻腔, 軟口蓋, 上・中咽頭からリンパ流を受け, 内頸静脈に輸出リンパ管を送るリンパ節で, その最上方のものはルビエールリンパ節と称される. ルビエールリンパ節へは咽頭癌からの転移がしばしばみられるが, 口腔癌の転移はまれとされている. 今回, 後方への浸潤がないにもかかわらずルビエールリンパ節に転移を生じた口腔癌3例を経験したので報告する. [症例]症例1は58歳, 男性. 他院で左上顎側切歯歯根嚢胞の診断のもと摘出術が施行された. 摘出標本にて扁平上皮癌と診断されたため, 当科にて上顎骨部分切除術および頸部郭清術を行った(pN1). 3か月後対側ルビエールリンパ節に転移を認め, 再手術を行ったが, 初回手術より10か月後で頸部死となった. 症例2は72歳, 男性. 下顎歯肉癌(T2N1M0)にて下顎骨辺縁切除術および頸部郭清術を施行した(pN1). 2年9か月後に患側levelVBおよびルビエールリンパ節に転移を認め, 放射線併用動注化学療法を施行するも制御できず, 初回手術後4年後に頸部死となった. 症例3は60歳, 女性. 上顎歯肉癌(T2N0M0)にて上顎骨部分切除術を施行したが, 2か月後にルビエールリンパ節を含む両側頸部に多発性転移を認めた. 両側頸部郭清術と術後照射を施行(pN2c), 9か月後現在経過, 良好である. [まとめ]ルビエールリンパ節転移は軟口蓋や中咽頭に浸潤した後方進展型の口腔癌でみられることが報告されているが, 今回報告したように後方への浸潤がなくてもまれに転移を生じることがある. 同リンパ節転移は診断時にすでに内頸動脈に浸潤し根治療法は困難なことも少なくないが, 今回の症例3のように早期発見により切除可能となる場合もあり, 画像診断の重要性が示された.
ISSN:0915-5988