C-19. 痴呆を有する口腔癌患者の3症例

痴呆患者における悪性腫瘍の治療は, 大変困難であるが, 最近われわれは痴呆を有する高齢者の口腔癌患者を3例経験したので報告した. 【症例1】患者:80歳男性. 初診:平成14年8月27日. 主訴:右顎下部の疼痛. 既往歴:アルツハイマー型痴呆症(HDS-R:8), 高血圧症. 現症:右口底部に圧痛を伴う弾性硬の腫瘤を触知した. 診断:右舌下腺癌(T2N0M0)処置および経過:平成14年10月30日手術目的で入院するも, 不穏が強く, 入院加療が困難であった. 外来で化学療法を継続していたが平成15年9月急性心不全のため死亡. 【症例2】患者:74歳男性. 初診:平成14年12月13日. 主訴:...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 16; no. 3; p. 135
Main Authors 横地恵, 栗田浩, 中塚厚史, 成川純之助, 酒井洋徳, 小林啓一, 田中廣一, 倉科憲治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔腫瘍学会 2004
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Summary:痴呆患者における悪性腫瘍の治療は, 大変困難であるが, 最近われわれは痴呆を有する高齢者の口腔癌患者を3例経験したので報告した. 【症例1】患者:80歳男性. 初診:平成14年8月27日. 主訴:右顎下部の疼痛. 既往歴:アルツハイマー型痴呆症(HDS-R:8), 高血圧症. 現症:右口底部に圧痛を伴う弾性硬の腫瘤を触知した. 診断:右舌下腺癌(T2N0M0)処置および経過:平成14年10月30日手術目的で入院するも, 不穏が強く, 入院加療が困難であった. 外来で化学療法を継続していたが平成15年9月急性心不全のため死亡. 【症例2】患者:74歳男性. 初診:平成14年12月13日. 主訴:左側下顎歯肉の腫脹. 既往歴:重度痴呆症(HDS-R:0). 現症:左側下顎3~6部頬側歯肉から頬粘膜に潰瘍を伴う腫瘤を認めた. 診断:左側下顎歯肉扁平上皮癌(T2N2cMx). 処置および経過:平成15年1月6日手術目的で入院するも徘徊等目立ち, 入院加療困難であった. 外来で化学療法を行っていたが, 5月入院中の精神病院にて他界. 【症例3】患者:74歳男性. 初診:平成15年4月25日. 主訴:両側顎下部の腫脹. 既往歴:アルツハイマー型痴呆症(HDS-R:18), 高血圧症. 現症:右口底部に分葉状の腫瘤を認めた. 診断:右口底部扁平上皮癌(T2N2cM1)処置および経過:両側頸部リンパ節や縦隔内リンパ節への転移を認めたため, 放射線治療および化学療法を施行. 6月13日退院し, 退院後はUFTの内服を継続している. 8月より腫瘍の増大傾向を認めているが, 疼痛は自制内にコントロールされており12月26日近病院に入院. 以上の3症例を経験し, 痴呆症を有する患者の悪性腫瘍の治療では, 患者との意思の疎通が困難, 疾患・診療に対する理解が得られない, 治療法の選択に制約がある, 入院管理が困難, 家族の治療への積極的協力が得にくい等の問題点が明らかとなった.
ISSN:0915-5988