C-37. 嚢胞を有した歯原性扁平上皮腫の一例

歯原性扁平上皮腫は, 組織学的に高度に分化した扁平上皮胞巣の増殖を特徴とする, まれな歯原性腫瘍である. 本腫瘍が歯原性嚢胞の嚢胞壁に認められたとの報告も散見されるが, 歯原性扁平上皮腫様増殖として歯原性扁平上皮腫とは区別され, 真の腫瘍性増殖ではないとの意見もある. 今回, 私たちは, 単胞嚢胞状を呈し, さらに骨皮質の吸収と, 周囲筋組織への浸潤性増殖を認めた歯原性扁平上皮種の一例を経験したので, その概要を報告した. 患者は, 57歳, 女性で, 近歯科医院にて回転パノラマX線写真上, 左側下顎枝部の骨透過像を指摘され, 紹介来科した. 初診時, 回転パノラマX線写真にて左側下顎智歯遠心...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 12; no. 3; pp. 146 - 147
Main Authors 林勝彦, 来間恵里, 田辺晴康, 池村邦男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔腫瘍学会 2000
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ISSN0915-5988

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Summary:歯原性扁平上皮腫は, 組織学的に高度に分化した扁平上皮胞巣の増殖を特徴とする, まれな歯原性腫瘍である. 本腫瘍が歯原性嚢胞の嚢胞壁に認められたとの報告も散見されるが, 歯原性扁平上皮腫様増殖として歯原性扁平上皮腫とは区別され, 真の腫瘍性増殖ではないとの意見もある. 今回, 私たちは, 単胞嚢胞状を呈し, さらに骨皮質の吸収と, 周囲筋組織への浸潤性増殖を認めた歯原性扁平上皮種の一例を経験したので, その概要を報告した. 患者は, 57歳, 女性で, 近歯科医院にて回転パノラマX線写真上, 左側下顎枝部の骨透過像を指摘され, 紹介来科した. 初診時, 回転パノラマX線写真にて左側下顎智歯遠心より下顎枝にかけて境界明瞭な単胞性の骨透過像を認め, CT所見では病変中央部の嚢胞様腔, 舌側骨の一部で骨皮質の吸収像がみられた. 試験切除の結果, 歯原性扁平上皮種が最も疑われたため, 平成11年5月, 全身麻酔下にて腫瘍摘出開窓術を施行した. その際, 舌側骨の一部に骨吸収を認め, 腫瘍組織と顎舌骨筋の癒着を認めた. 摘出物所見は35mm×15mm, 灰白色の著しく肥厚した嚢胞様組織であった. 術後8ヶ月を経過した現在, 治癒経過は良好で口腔内所見, X線所見より再発を思わせる所見は認めない. 手術材料の病理組織科学的所見として, 軽度錯角化を示す重層上皮よりなる嚢胞裏装上皮より連続して, 大小の扁平上皮胞巣の増殖を認めた. 腫瘍胞巣辺縁部は扁平細胞, その内側は好酸性胞体を有する上皮性細胞により構成されており, 核分裂像, 細胞異型は認めなかった. 間質は比較的疎な結合組織であり炎症性細胞浸潤は認めなかった. また, 淡明な胞体を有する少数個の細胞より構成された胞巣が, 散在性に顎舌骨筋内へ浸潤増殖している像を認めた. これら腫瘍細胞はサイトケラチン陽性であり, 上皮性であることが確認された. 以上所見より, 本腫例は単胞嚢胞状の歯原性扁平上皮腫と考えられた. 質問 産業医大・歯口外 池村邦男 (1)歯原性扁平上皮腫の分類について. (2)扁平上皮癌との鑑別について. 応答 東京慈恵医大・歯科 林勝彦 (1)1992年のWHO歯原性腫瘍分類において, 新たに分類された歯原性腫瘍である. (2)鑑別診断として, Primary intraosseous carcinomaが考えられたが, 本症例では腫瘍組織に細胞異型を認めなかったことから, 歯原性悪性腫瘍は否定した.
ISSN:0915-5988