B-46. 口腔領域に転移した他臓器癌の6例

悪性腫瘍の診断・治療に際して, 遠隔転移の有無は大きな予後因子である. しかし, 原発巣より先に転移病巣を発見した場合, これを即座に転移巣と診断することは大変難しい. 他臓器に原発した悪性腫瘍が口腔に転移することは稀で, 口腔に発生する悪性腫瘍の1~2%と報告されている. 今回私達は, 1986年から1998年までの13年間に当講座を受診した. 口腔領域に転移巣を形成した他臓器原発の悪性腫瘍の6例について報告し, 文献的考察を行った. 6症例の内訳は男性5例, 女性1例. 平均年齢66.3歳, 原発部位は腎2例, 肺2例, 胃1例, 肝1例であり, 口腔への転移部位は下顎骨2例, 下顎歯肉1...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 12; no. 3; pp. 118 - 119
Main Authors 渡辺直美, 藤川真紀, 片倉朗, 矢島安朝, 柴原孝彦, 野間弘康, 井上孝, 下野正基, 大西正俊, 小浜源郁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔腫瘍学会 2000
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Summary:悪性腫瘍の診断・治療に際して, 遠隔転移の有無は大きな予後因子である. しかし, 原発巣より先に転移病巣を発見した場合, これを即座に転移巣と診断することは大変難しい. 他臓器に原発した悪性腫瘍が口腔に転移することは稀で, 口腔に発生する悪性腫瘍の1~2%と報告されている. 今回私達は, 1986年から1998年までの13年間に当講座を受診した. 口腔領域に転移巣を形成した他臓器原発の悪性腫瘍の6例について報告し, 文献的考察を行った. 6症例の内訳は男性5例, 女性1例. 平均年齢66.3歳, 原発部位は腎2例, 肺2例, 胃1例, 肝1例であり, 口腔への転移部位は下顎骨2例, 下顎歯肉1例, 上顎歯肉1例, 頬粘膜1例, 顎下部1例であった. 組織型は, 腺癌2例, 腎細胞癌2例, 未分化癌1例, 確定診断に至らなかったものが1例であった. 口腔病変の診断時期は, 原発巣が診断される以前のものが4例, 以後のものが2例であった. なお, 以後のもの2例のうち1例は原発巣に対しての治療は行われていなかった. 原発巣がまだ診断されていなかった4例は生検あるいは手術標本の病理結果から他臓器癌が疑われ, 全身精査により原発巣を発見した. 治療に関しては, 当科で口腔病変の切除を行ったものが3例, 他機関で加療したものが3例であった. 口腔外科への来院理由は, 悪性腫瘍を疑ったものが多くを占めるが, 歯周炎・抜歯後治癒不全のように, 一般歯科に頻発する症状として紹介される場合も多い. 口腔への転移性癌の特徴的臨床所見はないという報告が多く, 組織学的および全身精査を行わないと判断できない. 口腔への転移性癌の原発組織型は腺癌・絨毛膜癌・未分化癌の順に多く認められる. 口腔癌では, その80%が扁平上皮癌であることから, 生検により, その他の組織型であった場合, 転移性癌の可能性を含めた精査も必要と思われる. 質問 山梨医大 大西正俊 6例中2例は転移病巣が原発病巣に先立って発見されたということでよろしいでしょうか. 生検での結果をもとに検索されたのでしょうか. 応答 東京歯大・2口外 片倉 2例のうち1例は, 顎嚢胞の臨床診断により摘出後, 病理検索で腎癌と診断, もう1例は生検により胃癌が診断されました. 質問 札幌医大・口外 小浜源郁 発表された転移性癌は血行性転移の可能性が考えられるので, 他臓器への転移についてはいかがですか. このような症例は, 全身への転移を疑って精査すべきであると考えます. 応答 東京歯大・1口外 渡辺直美 1. 6例中のうち3例に口腔以外の他臓器にも転移を認めた. 2. 口腔に初発症状を現わした4例のうち2例は悪性腫瘍をうたがい2例は生検を施行した段階で転移性癌と診断された.
ISSN:0915-5988