演題132 肝エキノコックス症における胆道病変の検討
肝エキノコックス症は寄生虫による感染症であり, その形態は腫瘤, 嚢胞形成を主体とする限局性肝腫瘤病変である. その臨床像は緩徐ではあるが, 進行性で門脈, 肝静脈および肝門部胆管系を圧排浸潤し, また肺脳などにも転移しやすく, 悪性疾患の病態に匹敵する. 今回は肝エキノコックス症における胆道病変について検討したので報告する. 当教室では過去10年間に姑息的外科治療を含む肝エキノコックス症の手術症例を7例経験した. 男性2例, 女性5例で, 平均年齢はそれぞれ59才, 43才である. 占拠部位と治療法は, 占拠部位PAMLの1例は開窓術, PAM3例のうち2例には開窓術および胆道内inner...
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Published in | 胆道 Vol. 4; no. 3; p. 371 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本胆道学会
1990
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Summary: | 肝エキノコックス症は寄生虫による感染症であり, その形態は腫瘤, 嚢胞形成を主体とする限局性肝腫瘤病変である. その臨床像は緩徐ではあるが, 進行性で門脈, 肝静脈および肝門部胆管系を圧排浸潤し, また肺脳などにも転移しやすく, 悪性疾患の病態に匹敵する. 今回は肝エキノコックス症における胆道病変について検討したので報告する. 当教室では過去10年間に姑息的外科治療を含む肝エキノコックス症の手術症例を7例経験した. 男性2例, 女性5例で, 平均年齢はそれぞれ59才, 43才である. 占拠部位と治療法は, 占拠部位PAMLの1例は開窓術, PAM3例のうち2例には開窓術および胆道内inner splint挿入術, 1例には嚢胞摘出術を施行した. またPA3例には右葉切除術, そのうち1例は胆道内inner splint挿入術を行なった後, 肝切除を施行した. 治療成績はPAML1例は5ヵ月後肝不全死, PAM3例中2例は3年11ヵ月, 1年9ヵ月後閉塞性黄疸, 肝不全にて死亡. 嚢胞摘出術の1例は1年4ヵ月の現在生存中である. PA3例中1例は3年11ヵ月後閉塞性黄疸, 肝不全にて死亡. 2例は6年3ヵ月, 1年後の現在生存中である. 死亡した4例はいずれも肝門部へ波及したエキノコックス病変が閉塞性黄疸を招来させ, 肝不全死に至らしめたと考えられた. 従って肝エキノコックス症の長期生存を得るには, 悪性腫瘍と同様に早期発見, 切除が原則となるが, 現実には進行例が多く, とくに肝門部胆管狭窄, 浸潤例では長期間開存可能な胆道再建術が必要と考えられる. 今回は肝エキノコックス症の胆道系への進展形式も含め検討する. |
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ISSN: | 0914-0077 |