演題103 胆道感染を合併した閉塞性黄疸症例の検討‐PTBD施行例における細菌学的分析から

胆道感染を合併した閉塞性黄疸症例の多くは重篤であり, 早期に胆道ドレナージ, 強力な化学療法を必要とする. PTBD施行例において臨床経過と細菌学的分析から興味ある結果を得たので報告する. 【対象と方法】胆道感染を合併した閉塞性黄疸症例でPTBDを施行し胆汁中から細菌が検出された6症例(胆道癌5例, 胆石症1例)を対象とした. 抗生剤は胆道感染で頻度の高いグラム陰性菌, 嫌気性菌にも有効なCFX 2gを1時間の点滴静注でPTBD施行直後から12時間間隔で投与した. 細菌学的分析は胆汁中細菌の同定, CFXに対する感受性試験(MIC, MLC, 6h-MLC)を行い, さらに, 経時的に血中およ...

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Published in胆道 Vol. 3; no. 3; p. 345
Main Authors 伊沢友明, 田畑育男, 江川直人, 神澤輝実, 増田剛太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1989
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Summary:胆道感染を合併した閉塞性黄疸症例の多くは重篤であり, 早期に胆道ドレナージ, 強力な化学療法を必要とする. PTBD施行例において臨床経過と細菌学的分析から興味ある結果を得たので報告する. 【対象と方法】胆道感染を合併した閉塞性黄疸症例でPTBDを施行し胆汁中から細菌が検出された6症例(胆道癌5例, 胆石症1例)を対象とした. 抗生剤は胆道感染で頻度の高いグラム陰性菌, 嫌気性菌にも有効なCFX 2gを1時間の点滴静注でPTBD施行直後から12時間間隔で投与した. 細菌学的分析は胆汁中細菌の同定, CFXに対する感受性試験(MIC, MLC, 6h-MLC)を行い, さらに, 経時的に血中および胆汁中のCFX濃度, 胆汁中の菌数の変化を測定した. これらの結果を臨床経過と対比検討した. 【結果】(1)胆汁中に検出された細菌はKlebsiella 3例, Enterobacter 3例, E.coli 1例, B.fragilis 1例の8菌株であり, 2例が混合感染で細菌数は10 5~10 7個/mlであった. (2)Enterobacterは全株がCFX高度耐性であり観察期間中に菌数の減少はなかった. CFX感性のKlebsiella 3菌株中2菌株でCFX投与後に菌数の減少がみられ24時間後に完全に消失した. 1菌株では菌数の減少がみられなかったが本症例は胆管内に胆石が充満し, 後に肝濃瘍が診断された. CFX感性のE.coli, B.fragilisの菌数は次第に減少し, 完全な消失まで2日以上を要した. (3)Enterobacterの3例は菌数の減少はなかったが臨床症状は胆道ドレナージによって好転した. septic schockで入院した1例は抗生剤の変更にもかかわらず菌数は10 7個以上を持続したが症状は消失し, 膵内胆管癌にIORとby-pass術を施行した. しかし, 1例はPTBDチューブの逸脱を契機にseptic shockに陥り死亡し, 1例は十分な胆道ドレナージが困難で胆道感染が持続し死亡した. 【まとめ】胆道感染を合併した閉塞性黄疸症例に対するfirst choiceは胆道ドレナージであり, 起因菌の減少消失がなくても臨床症状は好転する. しかし, 胆道ドレナージ不良が胆道感染の悪化につながり致命的になる. 細菌の消失には感受性が高く殺菌性の抗生剤が胆汁中にMLCを越えて移行する必要があり, 膿瘍や胆石の充満は胆道感染を遷延させる.
ISSN:0914-0077