演題71 胆石症の非観血的治療‐ビリルビンカルシウム結石内部構造の検討

「はじめに」:胆石症, 特に治療に難渋する肝内・総胆管結石, 遺残結石症に対し, 手術的方法のみで充分な成績をあげることは時に困難である. したがって最近の内視鏡下砕石補助装置の進歩, 体外衝撃波砕石装置の登場により, 非手術的治療法にかけられる期待は大きい. われわれは内視鏡的にコ系石や硬いビ系石を砕石補助装置で破壊するにあたり, 先ず結石の硬い外殻を破壊することが, 以後の砕・採石を容易にすることを強調し, ビリルビンカルシウム結石(ビ石)の表面構造の観察と, 外殻脆弱化をめざして溶解剤の効果を検討し, 昨年の本学会で発表した. 今回, さらにビ石内部構造の観察と溶解剤の作用を検討したので...

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Published in胆道 Vol. 3; no. 3; p. 329
Main Authors 井上茂章, 遠藤正章, 志田正一, 仲地広美智, 鈴木英登士, 杉山讓, 小野慶一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1989
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Summary:「はじめに」:胆石症, 特に治療に難渋する肝内・総胆管結石, 遺残結石症に対し, 手術的方法のみで充分な成績をあげることは時に困難である. したがって最近の内視鏡下砕石補助装置の進歩, 体外衝撃波砕石装置の登場により, 非手術的治療法にかけられる期待は大きい. われわれは内視鏡的にコ系石や硬いビ系石を砕石補助装置で破壊するにあたり, 先ず結石の硬い外殻を破壊することが, 以後の砕・採石を容易にすることを強調し, ビリルビンカルシウム結石(ビ石)の表面構造の観察と, 外殻脆弱化をめざして溶解剤の効果を検討し, 昨年の本学会で発表した. 今回, さらにビ石内部構造の観察と溶解剤の作用を検討したので報告する. 「材料, 方法」:胆道鏡下または手術で摘出した肝内結石(ビ石)を対象とし, MTBE(東京化成K.K.)2mlを作用させた. 作用時間をパラメータとして, 結石の乾燥重量と圧壊力を測定した. 以上の実験を衝撃波装置で予め分割しておいた結石と, 非分割結石の2群について行った. またMTBE, 我々の処方によるキレート剤, 10倍希釈2メルカプトエタノール(2-ME;和光純薬K.K.)を作用させたビ石の破壊状態を走査電顕で観察した. 「成績」:分割ビ石にMTBEを1, 2, 3, 6時間作用させると重量は76, 73, 55, 53%へと減少した. 圧壊力は対照の1.1Kg重に対し, 850, 650, 200, 150g重へと著減した. 非分割ビ石では重量はそれぞれ88.2, 84.1, 78.2, 73.9%, 圧壊力は対照の1.0Kg重に対し750, 750, 600, 600g重へと低下した. 電顕によると, 2-MEを12時間作用させたビ石の外殻は柘榴のように裂開し内部に多数の棘状構造が露呈した. メスで半割したビ石にキレート剤を48時間作用させると, 内部のamorphousな部から層構造部へ連なる領域を中心に柱状構造が多数証明された. 同じく半割ビ石にMTBEを3時間作用させると, amorphousな部は層構造部に比して中抜け状態となった. 「考察」:コ系石溶解剤MTBEは, ビ石に対しても使用できる. 分割ビ石群において重量減少比, 圧壊力の低下が大きいことから, ビ石内部のコレステロールをはじめとする脂質に作用すると考えられ, 砕石補助装置との併用効果は大きいとおもわれる. またビ石中のコレステロール成分はビ石の強度保持に与かっている可能性がうかがわれた.
ISSN:0914-0077