演題69 胆道系壁在神経の形態学的検討‐十二指腸乳頭部領域について

十二指腸乳頭部に存在するOddi筋をとりまく神経支配については定説がみられない. 今回われわれは中枢神経ニューロンの検索に用いられ, 微細な神経線維の検出や神経構築に適したGolgi染色法を胆道, 腸管壁神経描出に応用し, その壁在神経分布を明らかにし, Oddi筋と十二指腸壁との関連性について神経支配の立場より検討したので報告する. 【対象および方法】:胆道系および十二指腸乳頭部領域に病変のない新鮮剖検例20例を用いた. 総胆管末端部長軸方向の断面, 総胆管末端部長軸に対して垂直な断面, 乳頭十二指腸粘膜と平行な断面で組織片を作製した. これら組織片に対しBreitenbergのmodifi...

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Published in胆道 Vol. 3; no. 3; p. 328
Main Authors 須貝道博, 棟方博文, 羽田隆吉, 須郷貴和, 鈴木英登士, 佐々木睦男, 小野慶一, 高屋豪瑩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1989
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Summary:十二指腸乳頭部に存在するOddi筋をとりまく神経支配については定説がみられない. 今回われわれは中枢神経ニューロンの検索に用いられ, 微細な神経線維の検出や神経構築に適したGolgi染色法を胆道, 腸管壁神経描出に応用し, その壁在神経分布を明らかにし, Oddi筋と十二指腸壁との関連性について神経支配の立場より検討したので報告する. 【対象および方法】:胆道系および十二指腸乳頭部領域に病変のない新鮮剖検例20例を用いた. 総胆管末端部長軸方向の断面, 総胆管末端部長軸に対して垂直な断面, 乳頭十二指腸粘膜と平行な断面で組織片を作製した. これら組織片に対しBreitenbergのmodified Golgi法を用い, 連続切片を作製し, 三次元的立場より神経支配について検討した. 【結果】:Golgi渡銀で十二指乳頭部領域には筋間神経叢, 粘膜下神経叢, Oddi筋間神経叢の主なる3つの神経叢がみとめられた. (i)筋間神経叢:漿膜側より共染した血管を伴いながら神経束が外縦走筋内に入り, 網状構造を呈した筋間神経叢に入っていくのがみられた. さらに筋間神経叢より放射状に生じた神経線維は輪走筋内で格子状分布を示した. (ii)粘膜下神経叢:筋間神経叢より生じ, 輪走筋を貫き粘膜下層に達した神経線維は輪走筋近傍で神経線維が交錯し, 網目状を呈した粘膜下神経叢を形成していた. 粘膜下神経叢は筋間神経叢と異なり, 画一的なものではなく, 神経線維の分布も粗であった. (iii)総胆管十二指腸壁貫通部:輪走筋内を走行してきた神経線維は貫通部で寸断された状態を呈していたが, 一部これと直角方向に走行するOddi括約筋部の神経線維との間に移行がみられた. (iv)Oddi筋間神経叢:Oddi筋間およびOddi筋周囲には繊細な神経線維が互いに交錐しあい神経叢を形成していた. 十二指腸固有筋層ならびに粘膜下層由来の神経線維はこの神経叢に入り, 各層間に連がりがみられた. (v)膵胆管合流部:合流部中隔のOddi筋束間を走行する繊細な神経線維がみられ, 膵胆管周囲を走行する神経線維に移行していた. 神経線維は合流部より開口部にいくに従い密度は粗となり, 径も細くなっていった. 【まとめ】十二指腸乳頭部各層を結ぶ神経線維やOddi筋を支配する神経線維には一定の構築がみられた. すなわち筋間神経叢, 粘膜下神経叢ならびにOddi筋間神経叢間での連絡線維の存在や, Oddi筋間神経叢を介して開口部まで至る神経回路の存在である.
ISSN:0914-0077