演題178 胆管癌診断に関する一考察

〔目的〕画像診断の進歩に伴い, 胆管癌も比較的早期に診断可能となりつつあるため, 早期発見による根治が当面の目標となる. そこで, ERCPを行った胆管癌症例の臨床像および種々の画像所見の比較から, 早期胆管癌発見の糸口を検討した. 〔方法〕対象は, 最近当教室でERCPにて胆管癌と診断した23例であり, 臨床所見および画像解析を中心に検討した. 〔成績〕23例の内訳は, 早期胆管癌1例, 進行癌22例であった. 進行癌22例では, 年齢は35~80歳(平均65.8歳)で, 男12例, 女10例であった. 主占居部位は, Br, Bl各1例(4.5%), Bs5例(22.7%), Bm10例(...

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Published in胆道 Vol. 2; no. 3; p. 415
Main Authors 松本昌美, 菊池英亮, 中山雅樹, 菊川政次, 小泉雅紀, 辻田重信, 松本真, 大隅教之, 山尾純一, 塚本昇, 植村正人, 久保良一, 西村公男, 松村雅彦, 森田倫史, 辻井正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1988
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Summary:〔目的〕画像診断の進歩に伴い, 胆管癌も比較的早期に診断可能となりつつあるため, 早期発見による根治が当面の目標となる. そこで, ERCPを行った胆管癌症例の臨床像および種々の画像所見の比較から, 早期胆管癌発見の糸口を検討した. 〔方法〕対象は, 最近当教室でERCPにて胆管癌と診断した23例であり, 臨床所見および画像解析を中心に検討した. 〔成績〕23例の内訳は, 早期胆管癌1例, 進行癌22例であった. 進行癌22例では, 年齢は35~80歳(平均65.8歳)で, 男12例, 女10例であった. 主占居部位は, Br, Bl各1例(4.5%), Bs5例(22.7%), Bm10例(45.6%), Bi5例(22.7%)であった. 切除例は, 5例で全例Bmであった. 初発症状は, 食欲不振(59.1%), 腹痛(54.5%), 黄疸(45.5%)が多く, 生化学検査では, ALP, LAP, γ-GTPの上昇例が多く, それぞれ65.0%, 75.0%, 76.2%であった. 踵瘍マーカーは, CA19-9高値が87.5%と最も多く, CEA高値は40.0%であった. ERCPでは, 胆管狭窄, 閉塞像が20例, 陰影欠損像が2例であった. 膵胆管合流異常は4例(18.2%)に認め, そのうち3例に胆管拡張症をみた. 胆石合併は8例(胆嚢5例, 総胆管3例)であった. USによる胆管拡張像は18例にみられ, その径は7~20mm(平均11.3mm)であった. 腫瘤の検出率は, USが13.6%, CTが38.1%であり, 占居部位による差はみられなかった. 早期胆管癌の1例は, 55歳女性(糖尿病), 症状はなく, 一般諸検査にも異常はなかったが, スクリーニングとして行ったUSにて胆嚢内結石と胆管拡張を認め, ERCPではBiに3個の山田II型の立ち上がりを示す8~9mm大の表面凹凸のある小隆起性病変があり, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 〔断案〕進行胆管癌の初発症状では, 黄疸は半数以下にすぎず, 消化器症状にも注意を払わねばならない. 一方, 血液検査では胆道系酵素上昇が約70%, CA19-9高値が87.5%であり確定診断につながった. US, CTによる腫瘤の検出率は高くはないが, USによる胆管拡張所見は高率であり診断に有用であった. 一方, われわれの経験した早期胆管癌症例は, USによる胆管拡張所見のみ陽性であり, これがERCPによる診断につながった. 以上より, 早期胆管癌の診断には, CA19-9のチェックと共にUSによるスクリーニングを行い, ERCPを積極的に施行することが必要と考えられた.
ISSN:0914-0077