演題122 胆石合併大腸癌の臨床的検討

大腸癌の発生に胆汗酸が関与すると考えられる事から胆石症, 胆嚢摘除と大腸癌との関連が注目されている. 胆石合併大腸癌を胃癌と比較して臨床的検討を行った. 「対象」:1975年から1988年1月までの約13年間に当病院で経験した大腸癌初回手術症例を対象とした. 「結果」:1)頻度・年齢・性別 この期間における全大腸癌症例は236例である. 大腸癌と胆石症の合併した症例は19例で8.0%であった. 全大腸癌症例では男性127例, 女性109例であり, 胆石合併大腸癌は男性8例, 女性11例であった. 年齢は全大腸癌症例では平均62.6歳, 男性63.0歳, 女性62.1歳であった. 胆石合併大腸癌...

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Published in胆道 Vol. 2; no. 3; p. 387
Main Authors 伊藤誠司, 鈴木行三, 伊藤正直, 飯沼俊信, 桜庭清, 添野武彦, 進藤和夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1988
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Summary:大腸癌の発生に胆汗酸が関与すると考えられる事から胆石症, 胆嚢摘除と大腸癌との関連が注目されている. 胆石合併大腸癌を胃癌と比較して臨床的検討を行った. 「対象」:1975年から1988年1月までの約13年間に当病院で経験した大腸癌初回手術症例を対象とした. 「結果」:1)頻度・年齢・性別 この期間における全大腸癌症例は236例である. 大腸癌と胆石症の合併した症例は19例で8.0%であった. 全大腸癌症例では男性127例, 女性109例であり, 胆石合併大腸癌は男性8例, 女性11例であった. 年齢は全大腸癌症例では平均62.6歳, 男性63.0歳, 女性62.1歳であった. 胆石合併大腸癌の平均年齢は64.4歳, 男性68.9歳, 女性61.1歳であった. 同期間の胆石症合併胃癌の頻度は596例中41例, 6.9%であった. 平均年齢は全胃癌症例で57.2歳, 男性56.6歳, 女性58.8歳で, 胆石症合併胃癌で66.2歳, 男性64.2歳, 女性68.7歳であった. 2)胆石症診断の時期 大腸癌の診断以前に胆石症をすでに診断されあるいは胆嚢摘除術を受けていた患者は4例で, うち3例は胆嚢摘除術を受けていた. 大腸癌の診断と同時期に胆石症を診断された患者は13例であった. 大腸癌手術後に胆石症を診断された患者は2例であった. 男女比はそれぞれ3:1, 5:8, 0:2であった. 一方胃癌では胆嚢摘除後の胃癌手術例は1例のみで, 同時が24例, 胃癌手術後の胆石症が16例であった. 3)占居部位 全大腸癌症例ではC11例, A29例, T25例, D14例, S65例, R92例であった. SとRは157例で66.5%であった. 胆石合併大腸癌症例ではA4例, D2例, S7例, R6例であった. SとRは13例で68.4%であった. 4)胆嚢摘除術から大腸癌診断までの時期 胆嚢摘除術後に大腸癌と診断された症例は3例で, その期間は22年, 8年, 6年であった. このうち2例は胆嚢摘除術の前に胃切除術を受けていた. これらの大腸癌の占居部位はそれぞれS, S, Rであった. 「考按」:胆摘後に右側大腸癌が発生するといわれているが我々の症例では全て左側であった. 胃切除術後の胆嚢摘除例で大腸癌が発生した症例が2例あり, 胃切除術後の胆石症発生と胆嚢摘除術後の大腸癌発生に関連して注目される.
ISSN:0914-0077