演題167 胆嚢胆石症における胆嚢壁超音波像の検討 -病理所見との対比

胆嚢病変の超音波診断の特徴として, 壁の診断が行えることがあげられる. 我々は, 胆嚢胆石症における胆嚢壁超音波像の成り立ちを明らかにするために, 病理組織所見との対比を行った. <対象および方法>胆嚢胆石症にて胆嚢摘出術が施行された58例(男女比1:1, 平均年令54.6±13.4)を対象として, 術前の胆嚢壁超音波所見と摘出標本の病理組織所見との対比を行った. 超音波による胆嚢壁の評価は胆嚢面積が最大に描出される断面で, 肝床側の胆嚢体部にて行った. <成績>1. 超音波検査による胆嚢壁の厚さと切除標本の厚さを比較し, 有意の相関を認めた. (r=0.8, p<...

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Published in胆道 Vol. 1; no. 2; p. 354
Main Authors 高井英一, 土屋幸浩, 近藤福雄, 高梨秀樹, 柚木宏和, 岡田周市, 中村広志, 篠崎正美, 江原正明, 木村邦夫, 大藤正雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1987
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Summary:胆嚢病変の超音波診断の特徴として, 壁の診断が行えることがあげられる. 我々は, 胆嚢胆石症における胆嚢壁超音波像の成り立ちを明らかにするために, 病理組織所見との対比を行った. <対象および方法>胆嚢胆石症にて胆嚢摘出術が施行された58例(男女比1:1, 平均年令54.6±13.4)を対象として, 術前の胆嚢壁超音波所見と摘出標本の病理組織所見との対比を行った. 超音波による胆嚢壁の評価は胆嚢面積が最大に描出される断面で, 肝床側の胆嚢体部にて行った. <成績>1. 超音波検査による胆嚢壁の厚さと切除標本の厚さを比較し, 有意の相関を認めた. (r=0.8, p<0.01)2. 胆嚢胆石症における胆嚢壁超音波所見を, 壁の厚さ, 性状により, 壁肥厚をもたない正常型, 3mm以上の壁肥厚をもつが, 不整像を認めない平滑肥厚型, 3mm以上の壁肥厚をもち不整像を認める不整肥厚型に分類した. 58例中, 正常型34例, 平滑肥厚型13例, 不整肥厚型11例であった. また壁内に低エコー帯形成を伴うものは, 平滑肥厚例中に1例, 不整肥厚例中に4例であり, いずれも壁5mm以上のものにみられた. 3. 胆嚢壁所見正常型34例のうち, 胆嚢の腫大, 萎縮などを伴わず, 胆石の他, sludgeなどの内腔異常エコーを認めない15例を選び, 胆嚢超音波所見正常例とした. これらは臨床的には無症状で, 造影検査では胆嚢管通過障害を認めなかった. また胆石の種類としては, 純コレステロール石3例, 混成石4例, 混合石4例, ビリルビンカルシウム石1例, 黒色石3例であった. 4, 胆嚢壁の病理組織所見として, 浮腫, 細胞浸潤, 線維化の各項目につき, その程度を検討したところ, 胆嚢超音波所見正常例においても, 軽度の浮腫, 細胞浸潤, 線維化などの炎症所見を認めたが, 層構造はよく保たれていた. 5. 平滑肥厚型, 不整肥厚型についても同様に検討し, 浮腫, 細胞浸潤, 壊死, 線維化などの高度の炎症所見を認め, これが超音波所見に反映されていた. <まとめ>胆嚢胆石症手術例を対象に胆嚢壁超音波所見を分類し, 病理組織所見との対比を行った. 超音波検査にて正常所見を示した胆嚢壁を検討したところ, 組識学的には浮腫, 細胞浸潤, 線維化などの炎症所見を認めたが, 層構造はよく保たれていた. 胆嚢壁肥厚例ではより高度の炎症所見を認め, これが超音波所見に反映されていた.
ISSN:0914-0077