演題162 慢性炎症性腸疾患における胆汁酸の異常

目的, 方法:慢性炎症性腸疾患における胆汁酸代謝の異常を検討するためCrohn病11例, 潰瘍性大腸炎(UC)9例計20例について血中総胆汁酸の測定を行い, 4例では胆汁酸分画を検討した. 成績:1)一般肝機能検査成績 Crohn病ではBilirubinは一般に低値を示し平均0.27mg/dlであった. GOT, GPTは, 1例経過中1回74.41Uと上昇を示したのみでChEは3例でやや低値を示した. 蛋白分画では4例でAlbuminの減少, γ-Globulinの上昇が見られた. UCの症例では2例ChEの低下を見たのみであった. 2)これらの症例で血中総胆汁酸はCrohn病1.51±0....

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Published in胆道 Vol. 1; no. 2; p. 352
Main Authors 新井重紀, 杉本政直, 国分茂博, 松本茂樹, 山田伸夫, 石井公道, 勝又伴栄, 柴田久雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1987
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Summary:目的, 方法:慢性炎症性腸疾患における胆汁酸代謝の異常を検討するためCrohn病11例, 潰瘍性大腸炎(UC)9例計20例について血中総胆汁酸の測定を行い, 4例では胆汁酸分画を検討した. 成績:1)一般肝機能検査成績 Crohn病ではBilirubinは一般に低値を示し平均0.27mg/dlであった. GOT, GPTは, 1例経過中1回74.41Uと上昇を示したのみでChEは3例でやや低値を示した. 蛋白分画では4例でAlbuminの減少, γ-Globulinの上昇が見られた. UCの症例では2例ChEの低下を見たのみであった. 2)これらの症例で血中総胆汁酸はCrohn病1.51±0.78μmol/l, UC 1.87±0.85μmol/lと低値を示した. 3)胆汁酸分画を見るとUCの2例でGlycochenodeoxychol酸(GCDCA)Taurochenodeoxychol酸(TCDCA)のみが検出されそれぞれGCDCA 74.7, 145.7ng/mlTCDCA 34.8, 34.8であった. Chenodeoxychol, Glycochol酸, Deoxychol酸は測定されなかった. Crohn病2例中1例は総胆汁酸が1μmol/l以下で分画は不能, 他の1例はGlycochenodeoxychol酸は2.89μmol/lと多くGlycochol酸, Deoxycho1酸は検出されなかった. 4)病変部位との関係 これら症例の値は低値のため病変部位との関連は明らかでなかった. 考察並に結論:これら慢性炎症性腸疾患の肝機能はBilirulinの低下, 一部症例のChE低下, 蛋白分画の異常が見られたが他に著変を見ない. これに対し血中総胆汁酸は低下を示した. 胆汁酸の代謝にとって腸管は重要な部分であり総胆汁酸の低下は胆汁酸の腸管循環の障害が一因と考えられる.
ISSN:0914-0077