演題142 胆嚢および肝外胆管に癌腫のみられた自験7症例の臨床病理学的検討

胆道癌では胆嚢と胆管の両者に癌腫が存在することがあり, この場合多発癌であるか, 一方から他方への転移か, 連続性表層進展であるかあるいは, 壁外性の癌浸潤かなどが問題となり, その治療に当っても癌腫の遺残がないように十分配慮する必要がある. 1961年から1987年1月までに経験した胆嚢および肝外胆管の両者に癌腫の認められる症例は肝嚢, 胆管癌切除例217例のうち7例である. この7例につき臨床病理学的検討を行った. 症例1は胆嚢癌術後3.5年で下部胆管癌を生じた症例で異時性多発癌である. 症例2では中下部胆管, 胆嚢体部にそれぞれ癌腫が認められたが両者の連続性は認められない. 癌腫周囲の上...

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Published in胆道 Vol. 1; no. 2; p. 342
Main Authors 小田高司, 蜂須賀喜多男, 山口晃弘, 磯谷正敏, 石橋宏之, 加藤純爾, 神田裕, 松下昌裕, 原川伊寿, 久世真悟, 真弓俊彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 1987
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Summary:胆道癌では胆嚢と胆管の両者に癌腫が存在することがあり, この場合多発癌であるか, 一方から他方への転移か, 連続性表層進展であるかあるいは, 壁外性の癌浸潤かなどが問題となり, その治療に当っても癌腫の遺残がないように十分配慮する必要がある. 1961年から1987年1月までに経験した胆嚢および肝外胆管の両者に癌腫の認められる症例は肝嚢, 胆管癌切除例217例のうち7例である. この7例につき臨床病理学的検討を行った. 症例1は胆嚢癌術後3.5年で下部胆管癌を生じた症例で異時性多発癌である. 症例2では中下部胆管, 胆嚢体部にそれぞれ癌腫が認められたが両者の連続性は認められない. 癌腫周囲の上皮は変性が強く表層進展の所見は明瞭ではなかった. また上部胆管には, 壁外性浸潤によると思われる癌腫が認められた. 症例3でも同様に胆嚢, 胆管に広範囲に癌腫が認められたが両者の連続性は認められない. 症例4では中下部胆管, 上部胆管, 胆嚢底部, 3ヶ所にそれぞれ離れて癌腫がみられ, 胆嚢粘膜には表層進展も高度にみられた. リンパ節転移はなかった. 以上の4例はすべて胆道粘膜に不連続性の癌病巣があり, 異時性および同時性多発癌と考えられるが, 進行癌であり一方より他方への転移が否定出来るわけではない. 症例5は胆嚢, 胆嚢管に広く広がり一部のpmを除いてほとんどmにとどまる胆嚢癌があり, 同時にBmiにseの癌が存在することから胆管癌の連続, 表層性胆嚢内進展と考えている. 症例6, 7では胆嚢, 胆管の癌腫はともに進行癌であり, その進展様式の判定は困難であったが, 胆嚢, 胆管とも粘膜表層に癌の進展がみられることから連続性の表層進展と考えたい症例であった. 胆嚢, 胆管の両者に癌腫を認めることは比較的稀であり, 臨床的には多発癌, 転移, 壁内連続性進展の診断が必要であるが一般的には困難なことが多いとされている. 自験7例では4例が多発癌, 3例は連続性表層進展と考えたが, このような症例では手術にあたって癌の遺残をきたさないように肉眼所見を詳細に観察することが肝要である.
ISSN:0914-0077