3. 臼歯部咬合接触の左右的不均衡により惹起された顎関節症症例

「I. 緒言」顎関節症に対する咬合因子の関与については多くの議論があるが, 未だ明確な結論はでていない. そこで, 咬合診査によって臼歯部咬合接触の左右的な不均衡が認められた顎関節症患者に対して, 補綴学的に対応することで改善が認められた1症例について報告する. 「II. 症例の概要」初診時53歳の女性で, 平成12年8月に右側下顎角部の腫脹感と顎関節周囲の痛みを主訴として来院した. それらに加えて, 嚥下時の違和感や肩こりなどの症状も確認された. 「III. 治療内容」EMGバイオフィードバック法を応用したチェックバイトによる咬合所見より, 右側大臼歯部の不良補綴修復物による低位咬合があり,...

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Published in日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 52; no. 2; p. 299
Main Author 土谷昌広
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本補綴歯科学会 2008
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Summary:「I. 緒言」顎関節症に対する咬合因子の関与については多くの議論があるが, 未だ明確な結論はでていない. そこで, 咬合診査によって臼歯部咬合接触の左右的な不均衡が認められた顎関節症患者に対して, 補綴学的に対応することで改善が認められた1症例について報告する. 「II. 症例の概要」初診時53歳の女性で, 平成12年8月に右側下顎角部の腫脹感と顎関節周囲の痛みを主訴として来院した. それらに加えて, 嚥下時の違和感や肩こりなどの症状も確認された. 「III. 治療内容」EMGバイオフィードバック法を応用したチェックバイトによる咬合所見より, 右側大臼歯部の不良補綴修復物による低位咬合があり, その咬合異常に起因した下顎の右側偏位があることが明らかとなった. そのために顎関節症が惹起されていると推察し, 下顎の偏位の改善, および左右の咬合接触の均等化を図るため, 下顎にスタビライゼーション型スプリントを装着した. 症状の消失後, 7]6」部を暫間被覆冠に置換え, 症状の再発が無いことを確認したのち, 平成13年10月に最終補綴物を装着した. 「IV. 経過ならびに考察」最終補綴物装着後, 6年が経過しているが顎関節症症状の再発は認められない. 顎関節症患者の多くは下顎位や咬合接触状態に問題を有していることが多い. 本症例ではEMGバイオフィードバック法を用いた咬合治療によって咬合異常を改善し, 良好な結果が得られた. すなわち, 適切な診断法を組み合わせることで, 補綴学的アプローチが顎関節症治療において有用となることを示した.
ISSN:0389-5386