7. 疼痛感受性と顎機能障害発症の関係―5年間の前向きコホート研究から
「I. 目的」顎機能障害(TMD)は多因子性とされ, これまで様々な疫学調査が行われてきたが, 機能検査を用いた疫学的報告はない. 我々はTMDの寄与因子を探るため機能検査を用いた前向きコホート研究を行ってきた. 今回は圧痛閾値(PPT)検査を用いた5年間の研究から得られた知見を報告する. 「II. 方法」TMDの既往, 現症を持たない岩手医科大学歯学部学生135名を5年間追跡した. 調査開始初年度に質問票と臨床所見からTMD発症の調査を行い, 同時にPPTの測定を行った. 5年経過後に再び初年度と同様の調査を行った. PPTの測定には直径10mmの円柱状のチップを取り付けた圧測定プローブを使...
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Published in | 日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 52; no. 2; p. 269 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本補綴歯科学会
2008
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Summary: | 「I. 目的」顎機能障害(TMD)は多因子性とされ, これまで様々な疫学調査が行われてきたが, 機能検査を用いた疫学的報告はない. 我々はTMDの寄与因子を探るため機能検査を用いた前向きコホート研究を行ってきた. 今回は圧痛閾値(PPT)検査を用いた5年間の研究から得られた知見を報告する. 「II. 方法」TMDの既往, 現症を持たない岩手医科大学歯学部学生135名を5年間追跡した. 調査開始初年度に質問票と臨床所見からTMD発症の調査を行い, 同時にPPTの測定を行った. 5年経過後に再び初年度と同様の調査を行った. PPTの測定には直径10mmの円柱状のチップを取り付けた圧測定プローブを使用し, 一定の速度で咬筋中央部を左右交互に3回ずつ計測し, 計6回の平均値を個人のPPTとした. 測定後はPPTのカットオフ値を2.0kgfとして, PPTの5年間での変化から被験者を4群に分類した. 5年間でのPPTの変化を説明変数, 5年間での咀嚼筋痛発症の有無を目的変数としたオッズ比(OR)を求め, 性差を補正するためにロジスティック回帰分析により調整ORを求めた. 統計学的有意性は95%信頼区間(95%CI)から判定した. 「III. 結果と考察」5年間で咀嚼筋痛が発症したのは135名中16名であった. PPTの5年間での変化と, 咀嚼筋痛発症との関係では, PPTが2.0kgf以上から2.0kgf以下に低下した群がOR:9.39(95%CI:2.08-42.44)と最も高いリスクを示し, 低いPPTが継続した群も高いORを示した. 以上より, 疼痛感受性が亢進した場合や, もともとの素因として疼痛感受性が高い者に, 咀嚼筋痛が発症しやすいことが明らかとなった. |
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ISSN: | 0389-5386 |