10. 顎関節における咀嚼運動の分析に適した下顎頭点に関する臨床的研究

「I. 目的」顎関節の下顎運動解析のために, 3次元6自由度の顎運動測定装置の開発が進められ, 近年普及しつつある. これにより, 開閉口運動や前方運動, 後方運動, 側方滑走運動時の下顎頭の3次元動態に関する研究が行われ, 各運動を分析するために適した下顎頭点について検討されている. しかし, 顎口腔系の機能状態を評価する上で重要な機能運動である咀嚼運動時の下顎頭の3次元動態についての報告は少なく, 咀嚼運動の分析に適した下顎頭点が, 下顎頭のどの部分にあるか明らかにされていない. そこで今回, 下顎頭内に設定する下顎頭点の位置を変えて咀嚼運動経路を分析し, 下顎頭点の位置を変えることが咀嚼...

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Published in日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 42; no. 6; p. 1124
Main Authors 玉利秀樹, 茂木伸子, 松本吉生, 高原成和, 東和生, 高島史男, 丸山剛郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本補綴歯科学会 1998
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Summary:「I. 目的」顎関節の下顎運動解析のために, 3次元6自由度の顎運動測定装置の開発が進められ, 近年普及しつつある. これにより, 開閉口運動や前方運動, 後方運動, 側方滑走運動時の下顎頭の3次元動態に関する研究が行われ, 各運動を分析するために適した下顎頭点について検討されている. しかし, 顎口腔系の機能状態を評価する上で重要な機能運動である咀嚼運動時の下顎頭の3次元動態についての報告は少なく, 咀嚼運動の分析に適した下顎頭点が, 下顎頭のどの部分にあるか明らかにされていない. そこで今回, 下顎頭内に設定する下顎頭点の位置を変えて咀嚼運動経路を分析し, 下顎頭点の位置を変えることが咀嚼運動時下顎頭運動経路の概形に影響を及ぼすかどうか検索することを目的として本実験を行った. 「II. 方法」被験者は, 正常群として顎関節に異常を認めない個性正常咬合者3名, 患者群として片側性復位性関節円板前方転位患者, 片側性被覆異性関節円板前方転位患者, 片側下顎頭に骨変化を認める患者各1名を選んだ. 下顎運動の測定には顎運動測定装置ナソヘキサグラフシステム(株式会社小野測器, 株式会社GC)を用い, 皮膚上の平均的下顎頭点を測定点としてガム咀嚼時の下顎運動の記録を行った, 正貌および側貌の頭部X線規格写真の撮影を用いて皮膚上の平均的下顎頭点と解剖学的下顎頭点の位置関係を明らかにし, 解剖学的下顎頭点の座標をナソヘキサグラフシステムに入力した. 解剖学的下顎頭点およびその周囲で下顎門内に位置する多点の咀嚼運動経路を再生し, 各点における咀嚼運動経路の概形を観察し, 検討を行った. 「III. 結果と考察」下顎頭内に設定する測定点位置を上下方向, 前後方向に変えると咀嚼運動時下顎頭運動経路の概形の変化は大きいが, 内外方向に変えても変化は小さいことが明らかとなり, 咀嚼運動時下顎頭運動経路の分析を行うためには下顎頭点の上下方向, 前後方向の設定が必要であることが示唆された.
ISSN:0389-5386