構造方程式モデリングの光と影1
「SEMは理論か」 日本における双生児研究の歴史には断絶がある. 1950年代に, その後わが国を代表することになる心理学者の多くがこれに関わり, 双生児を特別に入学させる学校(現東京大学教育学部附属中等学校)まで設立するという黄金期を経験したにもかかわらず, その後その伝統はほとんど継承されることなく, 1980年代から欧米諸国で発展した行動遺伝学研究の潮流も, ごく近年になって, 筆者らを含む「新しい世代」がこれをわが国で展開しようとし始めるまで, 省みられなかった. 双生児研究の断絶の理由のひとつ, 「古い世代」の双生児研究者たちが新しい行動遺伝学研究に対して抱いていた批判は「理論がない...
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Published in | パーソナリティ研究 Vol. 15; no. 1; pp. 120 - 123 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本パーソナリティ心理学会
2006
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ISSN | 1348-8406 |
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Summary: | 「SEMは理論か」 日本における双生児研究の歴史には断絶がある. 1950年代に, その後わが国を代表することになる心理学者の多くがこれに関わり, 双生児を特別に入学させる学校(現東京大学教育学部附属中等学校)まで設立するという黄金期を経験したにもかかわらず, その後その伝統はほとんど継承されることなく, 1980年代から欧米諸国で発展した行動遺伝学研究の潮流も, ごく近年になって, 筆者らを含む「新しい世代」がこれをわが国で展開しようとし始めるまで, 省みられなかった. 双生児研究の断絶の理由のひとつ, 「古い世代」の双生児研究者たちが新しい行動遺伝学研究に対して抱いていた批判は「理論がない」ということだった. この世代の双生児研究, 特にパーソナリティ研究は, ドイツ心理学の人格理論である「層理論」に基づく研究を展開し, 人格は精神テンポなど深い階層から, 知性のような低い浅い階層まで, 遺伝規定性の高さによって階層的な構造をなすことを示そうとした. その目から見ると, 新しい行動遺伝学は, サンプル数こそ何千, 何万組と膨大であるが, ひたすら遺伝率何パーセントを羅列するだけで, 統合的なグランドセオリーの構築には結びつかないものと受け止められたのだろう. |
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ISSN: | 1348-8406 |