陳旧性大胸筋皮下断裂の一例

「はじめに」大胸筋皮下断裂は稀な疾患であり, 本邦においては我々が渉猟し得た範囲では, 20例の報告1)~4)6)~8)12)13)を見るにすぎず, そのうち陳旧例は約半数を占めている. 今回我々は, 逮捕訓練中に受傷した陳旧性大胸筋皮下断裂に対し腸脛靭帯を用いた大胸筋再建術の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例 症例:28歳, 男性, 機動隊隊員 主訴:運動時前胸部痛, 脱力感 現病歴:1998年7月, 逮捕訓練中に左胸部を強打し受傷した. 同年9月より運動時の左胸部痛および脱力感を自覚し, 外観上左前胸部から腋窩部にかけて陥凹を認めた. 以後症状が軽快しないため, 同...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 49; no. 1; pp. 189 - 192
Main Authors 冨里恵美, 川越正一, 神薗豊, 黒木龍二, 谷畠満, 田島直也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 2000
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Summary:「はじめに」大胸筋皮下断裂は稀な疾患であり, 本邦においては我々が渉猟し得た範囲では, 20例の報告1)~4)6)~8)12)13)を見るにすぎず, そのうち陳旧例は約半数を占めている. 今回我々は, 逮捕訓練中に受傷した陳旧性大胸筋皮下断裂に対し腸脛靭帯を用いた大胸筋再建術の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例 症例:28歳, 男性, 機動隊隊員 主訴:運動時前胸部痛, 脱力感 現病歴:1998年7月, 逮捕訓練中に左胸部を強打し受傷した. 同年9月より運動時の左胸部痛および脱力感を自覚し, 外観上左前胸部から腋窩部にかけて陥凹を認めた. 以後症状が軽快しないため, 同年12月4日, 当科初診した. 既往歴:特記すべき事なし. 理学所見:左前胸部から腋窩部にかけて陥凹を認め, その近位部に硬結を触れた(図1). 左肩関節可動域良好であるが, 徒手筋カテストで内転, 内旋が4であった. 検査所見:術前エコー像では, 左大胸筋線維方向に沿う長軸像において筋線維の走行が途絶し, 内部に低エコー域を認め(図2), また, MRI T2強調画像において前胸部の陥凹部と一致する部位に高信号域を認め, 同部が断裂部と考えられた(図3).
ISSN:0037-1033