III-07 尾瀬のニホンジカにおけるミトコンドリアDNA D-loop領域の塩基配列の決定

【目的】ニホンジカは1995年頃から尾瀬地域で確認されるようになり, ニホンジカによる希少植物の食害や樹皮剥ぎによる樹木の立ち枯れの被害が報告されるようになった. これまで当研究室では, 栃木, 群馬, 福島県に生息するニホンジカ集団の遺伝的特徴を明らかにしてきた. そこで本研究では, 尾瀬に生息するニホンジカが, いずれの集団から移動してきたのかを明らかにするために, 尾瀬地域で捕獲されたニホンジカのミトコンドリアDNA D-loop(mtDNA D-loop)領域の塩基配列を決定した. 【材料及び方法】実験には2006年5月~2007年5月にかけて尾瀬地域で捕獲された野生ニホンジカ15頭を...

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Published in動物遺伝育種研究 Vol. 35; no. 2; p. 239
Main Authors 名取美貴, 福井えみ子, 松本浩道, 吉澤緑, 小金澤正昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本動物遺伝育種学会 2007
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Summary:【目的】ニホンジカは1995年頃から尾瀬地域で確認されるようになり, ニホンジカによる希少植物の食害や樹皮剥ぎによる樹木の立ち枯れの被害が報告されるようになった. これまで当研究室では, 栃木, 群馬, 福島県に生息するニホンジカ集団の遺伝的特徴を明らかにしてきた. そこで本研究では, 尾瀬に生息するニホンジカが, いずれの集団から移動してきたのかを明らかにするために, 尾瀬地域で捕獲されたニホンジカのミトコンドリアDNA D-loop(mtDNA D-loop)領域の塩基配列を決定した. 【材料及び方法】実験には2006年5月~2007年5月にかけて尾瀬地域で捕獲された野生ニホンジカ15頭を用いた. これらの耳朶サンプルから常法に従いDNAを抽出し, PCRによりmtDNA D-loop領域を増幅した. 得られたPCR産物を精製後, ダイレクトシークエンスによりその塩基配列を決定し, 得られた塩基配列を解析用ソフトGENETXYにより解析した. 【結果】15頭の解析結果より, 6ハプロタイプが確認され, タイプ1~6とした. その内訳は, それぞれタイプ1(1073bp)が8頭, タイプ2(1072bp)が1頭, タイプ3(1073bp)が1頭, タイプ4(1074bp)が2頭, タイプ5(1112bp)が1頭, タイプ6(1114bp)が1頭であった. また, タイプ1の塩基配列は, これまで本研究室で確認された日光の集団で最も多いタイプと一致した. さらに, タイプ1~4は約40bpの繰り返し配列を6回保持しており, タイプ5およびタイプ6は, 7回の繰り返し配列を有していた. 現在, これらの結果をこれまで当研究室で得ている種々のニホンジカ集団における解析結果と照合し, 比較検討中である.
ISSN:1345-9961