III-01 ブータン在来牛におけるミトコンドリアDNAの多様性

【目的】ブータン在来牛の遺伝子構成を調査する目的で, ミトコンドリアDNA, D-loop領域の塩基配列を決定した. その塩基配列から遺伝的構造を調べると共に, 遺伝的多様性の調査を行った. 【方法】ブータンの8地域(Haa, Thimphu, Wangdue-Phodrang, Chhukha, Trongsa, Bhumthang, Zhemgang, Tashigang)より得た30個体の血液試料サンプルよりD-loop領域を増幅した. ダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定し, 系統樹を作成した. 【結果】4個体(13.3%)がB. taurus型のmtDNAハプロタイプを示し,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in動物遺伝育種研究 Vol. 34; no. 2; p. 121
Main Authors 林邦忠, 小田原清史, 笹崎晋史, 山本義雄, 並河鷹夫, 田中和明, Tashi DORJI, Gyen TSHERING, 向井文雄, 万年英之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本動物遺伝育種学会 2006
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】ブータン在来牛の遺伝子構成を調査する目的で, ミトコンドリアDNA, D-loop領域の塩基配列を決定した. その塩基配列から遺伝的構造を調べると共に, 遺伝的多様性の調査を行った. 【方法】ブータンの8地域(Haa, Thimphu, Wangdue-Phodrang, Chhukha, Trongsa, Bhumthang, Zhemgang, Tashigang)より得た30個体の血液試料サンプルよりD-loop領域を増幅した. ダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定し, 系統樹を作成した. 【結果】4個体(13.3%)がB. taurus型のmtDNAハプロタイプを示し, 残りの26個体(86.7%)がB. indicus型のタイプを示した. ブータン在来牛は, 一般的にB. indicus型の形態を示すことから, ヨーロッパ品種のブータン集団への遺伝子流入が示唆された. また, 系統樹分析から, B. indicus型ハプロタイプは大きく2つのミトコンドリアグループ(I1, I2)に分類された. ブータン集団におけるI2グループの頻度は46.2%であった. 中国在来牛を分析した結果では, 中国におけるI2グループの割合は11%であることが報告されている. この結果は, ブータンと中国間でのB. indicus型mtDNAの異なった遺伝子構成を示唆している. B. indicus型ハプロタイプの平均置換率を計算したところ, ブータン集団では0.75%であり, インド(0.41%)や中国(0.19%)と比べて高い傾向にあった. これらの結果は, ブータン在来牛は高いミトコンドリアDNAの多様性を保持していることが示唆された.
ISSN:1345-9961