B-4-4.両側下顎骨骨体部仮骨延長術に対し長期予後観察を行った1例

本学会にて成人女性小下顎症の患者に両側下顎骨骨体部仮骨延長術を施行し, 術後約2年以上の経過観察を行った1例について検討し報告を行った. 本症例は下顎骨に対する予想移動量が両側共に11ミリの前方移動であり, 仮骨延長法の適応となった. 本症例は, 延長装置による固定期間が約9か月と長期であり, 他の文献報告と比較しても長期の固定期間症例であった. 術後創部の感染の危険性が少なければ, 延長部位の骨化が十分に認められるまで固定を行うことは本症例の場合, 装置除去術に伴ったミニプレート等による再固定術を回避する意味でも適切であったと考えられた. しかしながら, 固定期間をいかにして短縮化を図るかが...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 15; no. 3; p. 193
Main Authors 米澤久信, 太田和俊, 池邊哲郎, 篠原正徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 2005
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Summary:本学会にて成人女性小下顎症の患者に両側下顎骨骨体部仮骨延長術を施行し, 術後約2年以上の経過観察を行った1例について検討し報告を行った. 本症例は下顎骨に対する予想移動量が両側共に11ミリの前方移動であり, 仮骨延長法の適応となった. 本症例は, 延長装置による固定期間が約9か月と長期であり, 他の文献報告と比較しても長期の固定期間症例であった. 術後創部の感染の危険性が少なければ, 延長部位の骨化が十分に認められるまで固定を行うことは本症例の場合, 装置除去術に伴ったミニプレート等による再固定術を回避する意味でも適切であったと考えられた. しかしながら, 固定期間をいかにして短縮化を図るかが今後の課題として挙げられる. さらに, 術後2年間において臨床症状, 画像検索およびセファロ分析により認められた点が複数認められたが, その中でもセファロ分析によりGo-Me, S-Meの距離は坂本法による下顎骨長よりも後戻りが10パーセント程度高かった. この点に関しては, 術後矯正の期間中に咬合状態, 咬合高径の改善等による測定点の変化により, 実測長による下顎骨の変化と異なった点が考えられる. 各項目で術直後から術後1か月をピークに後戻りが始まるものの, 術後3か月以降はほぼ変化が認められなかった. よって, 使用する延長器具の適切な選択と共に後戻りが開始される同時期においての対応が必要であると思われる. また, overcorrectionを加味した仮骨延長の治療計画についても検討の余地が残されている. また, 臨床症状の面からは術後経過観察期間においては両側顎関節症状が認められなかった. このことは, 前方移動に伴う延長による顎関節に対してのメカニカルストレスが症状としては認められないことが示唆された. しかしながら造影MRI等の画像による検索が必要であり, また後戻りによって同部位が代償的に作用したか否かについてもさらに検討が必要であろうと思われる.
ISSN:0916-7048