1-A-17.Rigid External Distraction(RED)systemを応用して上顎骨延長を行った症例の術後変化

今回われわれは, 口唇裂口蓋裂を有する上顎劣成長の愚見2名に対してRigid External Distraction(RED)Systemを応用した上顎骨延長を行い, 両症例の骨延長後の上顎の術後変化について報告した. 症例は右側の唇顎口蓋裂を有する9歳4ヵ月男児(症例(1))と左側の唇顎裂を有する11歳6ヵ月女児(症例(2))で, high Le Fort I型骨切り術の後, RED systemによる上顎骨延長を行った. これら症例の術前, halo除去直後, 術後3ヵ月, 6ヵ月, 1 年の側面頭部X線規格写真を撮影し, ANSおよびU1の変化を計測するとともに, CTおよび三次元CT...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 10; no. 2; p. 176
Main Authors 原田清a, 榎本昭二a, 馬場祥行b, 大山紀美栄b, 黒田敬之b
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 2000
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ISSN0916-7048

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Summary:今回われわれは, 口唇裂口蓋裂を有する上顎劣成長の愚見2名に対してRigid External Distraction(RED)Systemを応用した上顎骨延長を行い, 両症例の骨延長後の上顎の術後変化について報告した. 症例は右側の唇顎口蓋裂を有する9歳4ヵ月男児(症例(1))と左側の唇顎裂を有する11歳6ヵ月女児(症例(2))で, high Le Fort I型骨切り術の後, RED systemによる上顎骨延長を行った. これら症例の術前, halo除去直後, 術後3ヵ月, 6ヵ月, 1 年の側面頭部X線規格写真を撮影し, ANSおよびU1の変化を計測するとともに, CTおよび三次元CTによる観察を行った. その結果, 術後1年までのCTおよび三次元CT画像上の変化では, 術後6ヵ月までに延長部は新生骨で満たされ, その後は徐々に延長部の骨形成と骨の改造が進むものと考えられた. また, 上顎骨の上下的変化はhalo除去後より術後1年まで比較的安定していたが, 前後的には骨延長による前方移動量に対して15~17%の後方への変化が観察され, その変化のほとんどは術後6ヵ月までに生じており, この時期は延長部が新生骨で満たされつつある期間とほぼ一致していた. halo除去後の歯性の変化は前後的上下的ともに比較的安定していたが, 骨延長に伴うU1の変化が, 同じく延長に伴うANSの変化よりも大きくなる場合もあり, 歯列を固定源とする本治療法においては, 歯に負担がかかりやすい という点に配慮が必要であると考えられた. 質問 北海道大歯口腔機能 佐藤嘉晃 1. Bone graftは行っておられますか. 2. 行ってない場合, Minor segmentの移動に苦慮することはございませんか. 回答 東医歯大大学院口腔機能再建 原田清 歯列に装着する装置は, 唇舌側弧線で連結してあるので, 顎裂部骨移植術を施行していなくても, major segmentとlesser segmentの両segment間の位置関係が, 上顎骨延長によって大きく変化することはなく, 両segment一塊として骨延長は行われている. ただし, 唇顎口蓋裂の患者の場合, lesser segment の移動に困難を感じることがあったため, 発表の中では原則1日1mmの骨延長ピッチでと申し上げたが, 実際には, 左右の延長rodで, 延長のピッチを変え, lesser segmentの移動のコントロールを行った. 質問 鹿児島大歯口外1 大久保章朗 症例1で, 延長期間が31日と長くなった原因は何ですか. 回答 東医歯大大学院口腔機能再建 原田清 症例1で骨延長に31日間を要した理由は, 口蓋形成術後の口蓋の瘢痕組織が厚く, 強固であったこと, 固定源とした歯が, 第1大臼歯が未萌出であったことから, 第2乳臼歯としたために固定力が弱く前方への牽引力が, 上顎骨に伝わりにくかったこと, 延長rodの長さを使い切り, rodのネジを戻して再装着したときに延長量のロスが生じたことなどが挙げられる. 延長期間が比較 的長期化したため, 部分的に骨形成が生じ, 上顎骨の移動効率が低下した可能性も考えられる.
ISSN:0916-7048