当科における上下顎同時移動術を行った症例の術中・術後管理について

単純な骨格性下顎前突症には一般には下顎枝矢状分割術が多く適応されているが, 上顎劣成長を伴う下顎前突症や開咬症に対する顎矯正として上下顎骨切りによる同時顎移動術が多く行われるようになってきている. 顎変形症患者においては, その手術の対象となる年齢は通常10歳代後半から20歳代であるため全身状態は一般に良好であることが多いが, 上下顎同時移動術は手術の複雑性から手術に要する時間も長く, より安全な手術と術後の全身的合併症を引き起こさないためには, 術中, 術後の厳重な全身管理を行う必要があり, 麻酔法, 使用する薬剤の選択, 自己血輸血の利用等様々な工夫が必要である. 今回我々は当科で行った上...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 5; no. 2; p. 279
Main Authors 津村政則, 吉賀浩二, 大島和彦, 市川健司, 茅田義明, 高田和彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 1995
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Summary:単純な骨格性下顎前突症には一般には下顎枝矢状分割術が多く適応されているが, 上顎劣成長を伴う下顎前突症や開咬症に対する顎矯正として上下顎骨切りによる同時顎移動術が多く行われるようになってきている. 顎変形症患者においては, その手術の対象となる年齢は通常10歳代後半から20歳代であるため全身状態は一般に良好であることが多いが, 上下顎同時移動術は手術の複雑性から手術に要する時間も長く, より安全な手術と術後の全身的合併症を引き起こさないためには, 術中, 術後の厳重な全身管理を行う必要があり, 麻酔法, 使用する薬剤の選択, 自己血輸血の利用等様々な工夫が必要である. 今回我々は当科で行った上下顎同時移動術を施行した10症例について以下について報告した. 1. 症例は口唇口蓋裂症例6症例を含む10症例で, 術前評価では手術に支障をきたす症例はなかった. 2. 麻酔法はバランス麻酔で, 9症例に低血圧麻酔が併用されていた. 3. 手術時間は平均6時間18分, 平均出血量1,038mlで, 輸血は同種他家血輸血, 希釈式, 貯血式自己血輸血がおこなわれていた. 4. 術中輸液量は尿量, 出血量, 不感蒸泄量等綿密に観察, 計算し, 決定していた. 5. 術後は重篤な合併症は認められなかった. また顎間固定は全身状態が落ち着いた手術1~2日後に施行されていた.
ISSN:0916-7048