単一歯牙歯槽部骨切り術後の骨性治癒と歯髄内血流の変化

〔目的〕本研究は, サルを用いて単一歯牙歯槽部骨切り術(STDO)後の骨性治癒と歯髄の変化の様相を明らかにする目的で行った. 〔方法〕ニホンザル8頭を用い, STDOにより両側上顎側切歯を2mm唇側へ傾斜移動させた水平骨切り線を右側側切歯は根尖から約10mm上方(10mm群), 左側側切歯は根尖から約5mm上方(5mm群)に設定した. 術後1, 2, 4, 8週後に脱灰切片を作製し, 歯槽骨と歯髄についての光顕的観察を行った. また, レーザー血流計を用いて冠部歯髄の血流変化を測定した. 測定の際には, 血管収縮薬(noradrenaline;NA)を静脈内投与した後のNAに対する血流減少反応...

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Published in日本顎変形症学会雑誌 Vol. 4; no. 2; pp. 226 - 227
Main Authors 吉田恵, 丹根一夫, 大島和彦, 吉賀浩二, 高田和彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎変形症学会 1994
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Summary:〔目的〕本研究は, サルを用いて単一歯牙歯槽部骨切り術(STDO)後の骨性治癒と歯髄の変化の様相を明らかにする目的で行った. 〔方法〕ニホンザル8頭を用い, STDOにより両側上顎側切歯を2mm唇側へ傾斜移動させた水平骨切り線を右側側切歯は根尖から約10mm上方(10mm群), 左側側切歯は根尖から約5mm上方(5mm群)に設定した. 術後1, 2, 4, 8週後に脱灰切片を作製し, 歯槽骨と歯髄についての光顕的観察を行った. また, レーザー血流計を用いて冠部歯髄の血流変化を測定した. 測定の際には, 血管収縮薬(noradrenaline;NA)を静脈内投与した後のNAに対する血流減少反応の程度を評価し, 血流動態を捉えた. 〔結果および結論〕両群とも骨切断部では術後8週で新生骨梁による架橋がほぼ完了した. 歯髄には術後1週で空泡変性, 充血などが見られ, 術後4週以降, 冠部歯髄では二次象牙質の形成が進行し, 根部歯髄は歯髄固有の構造が保持されていた. 冠部歯髄の血流計測の結果, 術前ではNA投与後2~3分で約15%の一次的な血流の減少が認められた. また, 術後1, 2週におけるNA投与後1分時および3分時の血流の変化率は, 10mm群の方が5mm群よりも大きかった. 以上より, 組織学的には両群の治癒の過程に顕著な差は見られなかったが, 術後早期では, 10mm群の方が歯髄における血管の運動性が良好に維持されている可能性が示唆された. 質問 横浜市立港湾病院, 口外 増田元三郎 粘膜切開の方法(水平切開, 垂直切開)による骨, 歯髄に対する血流はちがうのではないでしょうか? 回答 唇側粘膜骨膜弁の血行が維持される点では, 水平切開よりも縦切開の方が良いと思われる. 今後, 実験的検討を加えたい. 質問 両群の血流量の結果は統計学的に有意差はありましたか? 回答 広島大, 歯, 矯正 吉田恵 例数が2例ずつと少なかったことなどから, 有意差の検定は行っていないが, 10mm群の血流の変化率は大きく, 差は明らかであると思われる.
ISSN:0916-7048