11. 内頸動脈低形成を伴った眼窩内成熟奇形腫の1例

【症例】12歳女性. 生下時明らかな異常は指摘されなかった. 以前から右側頭部痛があったが, X年4月から増強し近医を受診した. 右眼窩錐体内にCTで等信号を示し眼窩外側壁を破壊する腫瘍を認め, 翌日右眼球突出と結膜充血を認めた. MRIでは周囲が不均一に造影される20×13×11mm大の腫瘍内に出血性変化があり, 右視神経を内側に圧排していた. MRAでは右内頸動脈の描出が不良であり, 腫瘍による圧迫の影響と思われた. その後も症状が進行し疼痛コントロールが不能となったため, 当科に紹介された. 当科入院翌日, 右前頭側頭開頭で神経脱落症状を来さない範囲で血腫除去し腫瘍実質部の2/3程度を摘...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 60; no. 1; p. 62
Main Authors 櫻井公典, 山本泰永, 金谷康平, 柿澤幸成, 本郷一博, 下条久志, 吉澤明彦, 太田浩良, 中山淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 2012
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ISSN0037-3826

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Summary:【症例】12歳女性. 生下時明らかな異常は指摘されなかった. 以前から右側頭部痛があったが, X年4月から増強し近医を受診した. 右眼窩錐体内にCTで等信号を示し眼窩外側壁を破壊する腫瘍を認め, 翌日右眼球突出と結膜充血を認めた. MRIでは周囲が不均一に造影される20×13×11mm大の腫瘍内に出血性変化があり, 右視神経を内側に圧排していた. MRAでは右内頸動脈の描出が不良であり, 腫瘍による圧迫の影響と思われた. その後も症状が進行し疼痛コントロールが不能となったため, 当科に紹介された. 当科入院翌日, 右前頭側頭開頭で神経脱落症状を来さない範囲で血腫除去し腫瘍実質部の2/3程度を摘出し腫瘍圧迫を解除した. 腫瘍は皮膜を有し, 白色調で血腫を伴っており, 術中迅速組織診断では涙腺と考えられる組織であった. 術後, 眼球突出と結膜充血は改善し, 視野異常や眼球運動障害を来すことなく退院した. 術後病理組織診断は成熟奇形腫だった. 現在症状の再発はないが, 腫瘍再増大の可能性はあり, 定期的に外来経過観察を行っている. また, 術後の右内頸動脈は圧迫解除で拡張することも考えられたが, 術前同様に細く, 腫瘍圧迫による描出不良ではなく低形成によるものと思われた.
ISSN:0037-3826