6 大腸癌周術期に発症した遅発性ステント血栓症により心筋梗塞を呈した1例

症例は80歳, 男性. 主訴は胸痛. 大腸癌手術1週間前に胸痛にて近医を受診し, 心筋梗塞の診断にて当院へ転院搬送. 緊急冠動脈造影検査(CAG)で左前下行枝近位部に閉塞を認め, 同部位に3.5mm径の非薬剤溶出性ステント(BMS)を留置し, 大動脈内バルーンパンピング(IABP)を3日間挿入. maxCKは2,500IU/Lで術後は合併症をきたすことなく第25病日に退院. 退院後はアスピリン200mgとクロピドグレル75mgの2剤の抗血小板薬の内服を継続. 治療後約2ヵ月で大腸癌手術を近医で施行(右半結腸切除術). 術前から抗血小板薬は中止していた. 術直後から低血圧と呼吸苦を認め, 術後2...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 60; no. 1; p. 39
Main Authors 丸山拓哉, 筒井洋, 茅野千春, 酒井龍一, 大和眞史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 2012
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Summary:症例は80歳, 男性. 主訴は胸痛. 大腸癌手術1週間前に胸痛にて近医を受診し, 心筋梗塞の診断にて当院へ転院搬送. 緊急冠動脈造影検査(CAG)で左前下行枝近位部に閉塞を認め, 同部位に3.5mm径の非薬剤溶出性ステント(BMS)を留置し, 大動脈内バルーンパンピング(IABP)を3日間挿入. maxCKは2,500IU/Lで術後は合併症をきたすことなく第25病日に退院. 退院後はアスピリン200mgとクロピドグレル75mgの2剤の抗血小板薬の内服を継続. 治療後約2ヵ月で大腸癌手術を近医で施行(右半結腸切除術). 術前から抗血小板薬は中止していた. 術直後から低血圧と呼吸苦を認め, 術後20時間の心電図で前胸部誘導のST上昇と心エコーで前壁中隔の広範な無収縮を認め, 心筋梗塞再発疑いにて当院へ転院搬送. 緊急CAGでステント内血栓による閉塞を認めた. 発症してから長時間が経過していたと推測され, 血行再建は施行せずIABPを挿入しICUでの管理となった. カテコラミン製剤や利尿剤などの投与で心不全管理としたが, 治療に難渋し第19病日に死亡確認となった. 遅発性ステント血栓症に対する再認識とともに迅速な対応が必要と考えられた.
ISSN:0037-3826