2 悪性リンパ腫の心筋浸潤と思われた1症例

症例は72歳女性. 小腸の悪性リンパ腫(Type II enteropathy-associated T-cell lymphoma)切除術後の症例. 術後の転移, 再発の精査目的で施行されたFDG-PET/CTにて大腸, 小腸, 腸間膜リンパ節, 左心室に集積が認められ化学療法THP-COPを予定されたため, 抗癌剤治療前の心機能評価目的で心エコーを施行. 心室中隔基部の下壁側に17×22.6mmの低エコー領域が認められた. THP-COP2クール施行後, 経過観察で行った心エコーでは同部位が欠損し7×10.5mmの瘤状構造を形成し壁運動はdyskinesisであった. さらに2ヵ月後行われ...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 58; no. 6; p. 365
Main Authors 倉田淳一, 齋藤ちずる, 田中みどり, 両角典子, 野澤美幸, 上田明希子, 小林美佳, 草間昭俊, 忠地花代, 樋口佳代子, 加藤太門, 羽田健紀, 村山秀喜, 鈴木智裕, 櫻井俊平, 小見山祐一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 2010
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Summary:症例は72歳女性. 小腸の悪性リンパ腫(Type II enteropathy-associated T-cell lymphoma)切除術後の症例. 術後の転移, 再発の精査目的で施行されたFDG-PET/CTにて大腸, 小腸, 腸間膜リンパ節, 左心室に集積が認められ化学療法THP-COPを予定されたため, 抗癌剤治療前の心機能評価目的で心エコーを施行. 心室中隔基部の下壁側に17×22.6mmの低エコー領域が認められた. THP-COP2クール施行後, 経過観察で行った心エコーでは同部位が欠損し7×10.5mmの瘤状構造を形成し壁運動はdyskinesisであった. さらに2ヵ月後行われた心エコーでは同部位の瘤状構造のサイズは5×6.1mmと縮小していた. 心筋生検を行っていないため確定はできないが, 低エコー領域は悪性リンパ腫の心筋浸潤と考えられ, 化学療法により腫瘍細胞が消失した後に瘤状構造を呈したと考えられた. 一般的に悪性リンパ腫は様々な臓器で多様な病態を呈し比較的早い経過を辿るとされるが, 本症例も術後の転移, 再発までの経過が速く, 化学療法中の左室病変部変化も比較的短期間に変化していく様子を観察することができた. 悪性リンパ腫を含めた化学療法時の心エコー検査において心機能評価と共に本症例の様な心筋内の低エコー領域の有無や形態的変化を良く観察すること, また病変が認められた場合, その後の経過観察で病変部の変化を的確に捉えることを念頭に置いて検査することが必要であると考えられた.
ISSN:0037-3826