8 妊娠中に診断された褐色細胞腫合併妊娠の1例

妊娠に合併した褐色細胞腫の頻度は約5万妊娠に1例と極めて稀である. 今回我々は妊娠中に偶然見つかった副腎腫瘍が褐色細胞腫と判明し, その後慎重に管理し良好な結果を得た1例を経験した. 症例は30歳で初産婦. 妊娠17週4日に突然の右側背部痛を認めたため前病院を受診し, 泌尿器科にて水腎症, 水尿管, 右腎臓の頭側に腫瘤を指摘された. MRI検査と尿中ノルアドレナリン, ドーパミン, バニル マンデル酸(VMA)の上昇より, 妊娠19週時に褐色細胞腫と診断され, α1ブロッカーの内服を開始が, 周産期管理が困難と判断され, 妊娠25週3日当院に母体搬送とたった. 入院後の肝臓の超音波検査にて腫瘤...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 54; no. 1; p. 54
Main Authors 近藤理絵, 芦田敬, 酒井美幸, 岡賢二, 北直子, 金井誠, 塩澤丹里, 小西郁生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 2006
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Summary:妊娠に合併した褐色細胞腫の頻度は約5万妊娠に1例と極めて稀である. 今回我々は妊娠中に偶然見つかった副腎腫瘍が褐色細胞腫と判明し, その後慎重に管理し良好な結果を得た1例を経験した. 症例は30歳で初産婦. 妊娠17週4日に突然の右側背部痛を認めたため前病院を受診し, 泌尿器科にて水腎症, 水尿管, 右腎臓の頭側に腫瘤を指摘された. MRI検査と尿中ノルアドレナリン, ドーパミン, バニル マンデル酸(VMA)の上昇より, 妊娠19週時に褐色細胞腫と診断され, α1ブロッカーの内服を開始が, 周産期管理が困難と判断され, 妊娠25週3日当院に母体搬送とたった. 入院後の肝臓の超音波検査にて腫瘤を認めたためMRIを施行したところ褐色細胞腫の転移の可能性が疑われた. しかし妊娠中であるため侵襲的な検査は施行せず分娩後に精査する方針とした. 妊娠経過中に血圧に大きな変動はなく, 胎児発育も良好であった. α1ブロッカーを16mg/日程度まで増量し予定通り妊娠34週3日に帝王切開術を施行した. 術中, 術後に特に問題は認めず, 術後8日目に泌尿器科に転科し副腎腫瘍摘出術を施行した. 術後尿中VMAは正常化し経過良好のため母児ともに退院となった. 病理組織診は褐色細胞腫で悪性所見は認められなかった. 褐色細胞腫が妊娠に合併した場合の予後は, いかに早期に診断され, 適切な治療が行われるか否かにかかっている. 稀な疾患であるが特に妊娠初期からの高血圧を認めた場合や, 発作性の極度の高血圧を呈する場合には本疾患も念頭に入れた精査が必要になると考えられる.
ISSN:0037-3826