17. きわめて稀なBasal cell carcinoma of the nippleの1例

基底細胞癌は最も頻度の高い皮膚癌であり, 日本人の皮膚原発悪性腫瘍の45%を占める. 日光に暴露する頭頚部, とくに顔面の皺襞部に好発するが, 乳頭や乳輪部に発生することはきわめて稀である. 今回, 高齢女性の乳頭部に発生した基底細胞癌を経験したので文献的考察を加え報告する. 症例は72歳, 女性. 主訴は左乳頭, 乳輪部の黒色腫瘤. 約2年前に左乳頭部の色調変化に気づいた. 掻痒感をともなうようになり, その後びらんを形成し, 出血がみられたこともあった. 約1年前から扁平な黒色の腫瘤に変わり, 腫瘤が増大してきたため, 心配となり, 平成17年5月1日外来受診した. 局所所見では2.0×1...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 56; no. 1; p. 68
Main Authors 栗原照昌, 山田勲, 高橋厚, 荒井剛, 宮本幸男, 東郷庸史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 2006
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Summary:基底細胞癌は最も頻度の高い皮膚癌であり, 日本人の皮膚原発悪性腫瘍の45%を占める. 日光に暴露する頭頚部, とくに顔面の皺襞部に好発するが, 乳頭や乳輪部に発生することはきわめて稀である. 今回, 高齢女性の乳頭部に発生した基底細胞癌を経験したので文献的考察を加え報告する. 症例は72歳, 女性. 主訴は左乳頭, 乳輪部の黒色腫瘤. 約2年前に左乳頭部の色調変化に気づいた. 掻痒感をともなうようになり, その後びらんを形成し, 出血がみられたこともあった. 約1年前から扁平な黒色の腫瘤に変わり, 腫瘤が増大してきたため, 心配となり, 平成17年5月1日外来受診した. 局所所見では2.0×1.5cmの乾燥した黒色隆起性腫瘤を認め, 左乳頭を中心に一部乳輪に及ぶ. 乳房内に腫瘤, 硬結は触知せず, 腋窩, 鎖骨上リンパ節の腫大もなかった. マンモグラフィ, CTでも乳腺内の病変はなかった. 生検の結果, 基底細胞癌の診断を得たため, 最短5mmのマージンをもった広範囲切除を行った. 基底細胞癌は乳頭, 乳輪部皮膚内に限局しており, 切除断端は陰性であった. 術後3カ月経過するが局所再発の兆候はない. 【考察】乳頭, 乳輪部に発生した基底細胞癌は, 海外の文献をみても本例を含め23例のみであり, うち女性は6例であった. 乳頭, 乳輪部の腫瘍性病変としては, バジェット病との鑑別が重要であるが, 本疾患も稀とはいえ念頭に置く必要がある.
ISSN:1343-2826