13. リンパ浮腫のある患者への関わり‐複合的理学療法をおこなって
リンパ浮腫は生命の危険がないためか軽視されることが多く, 患者は苦痛や不安を抱えながらも適切なアドバイスが得られないまま, 制限された日常生活を余儀なくされている. 今回, 乳癌術後で癌性疼痛とリンパ浮腫で上肢の屈曲不可能な患者に複合的理学療法を行い, 良好な結果を得たので報告する. 【倫理的配慮】患者と家族に, 本症例の研究の主旨を説明し同意を得た. 【事例紹介】患者:M. Sさん(以下Mさん), 60代女性. 病名:右乳癌, 多発骨転移(頭蓋骨, 胸椎, 骨盤, 両側大腿骨)肝転移. 入院までの経過:平成13年1月, 右乳癌の診断で右乳房温存術を施行した. 平成16年2月, 多発骨転移を指...
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Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 56; no. 1; pp. 59 - 60 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
2006
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1343-2826 |
Cover
Summary: | リンパ浮腫は生命の危険がないためか軽視されることが多く, 患者は苦痛や不安を抱えながらも適切なアドバイスが得られないまま, 制限された日常生活を余儀なくされている. 今回, 乳癌術後で癌性疼痛とリンパ浮腫で上肢の屈曲不可能な患者に複合的理学療法を行い, 良好な結果を得たので報告する. 【倫理的配慮】患者と家族に, 本症例の研究の主旨を説明し同意を得た. 【事例紹介】患者:M. Sさん(以下Mさん), 60代女性. 病名:右乳癌, 多発骨転移(頭蓋骨, 胸椎, 骨盤, 両側大腿骨)肝転移. 入院までの経過:平成13年1月, 右乳癌の診断で右乳房温存術を施行した. 平成16年2月, 多発骨転移を指摘された. 平成17年4月頃より右上肢痛が出現し, オキシコンチン10mg/dayにて内服開始となった. また, 同時期に下半身の脱力感も出現した. オキシコンチン30mg/dayまで増量なるも疼痛コントロール不良のため, 平成17年5月, 入院となった. 入院後経過:1. 疼痛対策Mさんは入院時, 右上肢の疼痛としびれが強く, ペインスケールは4~5であり, わずかな体動でも悲鳴をあげるほどであった. 右上肢の腫脹も著明であり, 手は握れるが自力での右上肢屈曲は不可能(肘関節屈曲0度)であった. 本人の一番の希望は「この痛みをとってほしい」とのことであった. 現在, オキシコンチン140mg/dayと鎮痛補助剤でコントロールされており, ペインスケール「0」である. 2. リンパ浮腫対策疼痛がほぼコントロールされた状態で間欠式空気式圧迫法(以下SCD?)を開始した. SCDは右上肢に対して, 1日2回, 1回30分を行い, 一週間毎に計測と写真で評価を行った. 初回実施後, 自力での肘関節の屈曲が約45度可能となった. 本人より, 「すごいこんなに動くようになったわー. 」との言動が聞かれた. その後も1日2回継続して実施し, 運動療法, マッサージ, 弾性包帯の使用を追加することにより, 浮腫の軽減(特に手背)と右腕を使っての食事摂取が可能にまでなった. 【考察】Mさんの浮腫が軽減し, 目標達成できたのは, 複合的理学療法の全てが相互に関係し合い, 治療の効果があったと考えられる. また, 患者の心身の状態を十分アセスメントしたうえで, 患者の希望も取り入れ個別的な目標を設定しケアを行ったことが, 苦痛の緩和につながったと思われる. |
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ISSN: | 1343-2826 |