20.癌患者の心理的変化を知る-プロセスレコードを用いた援助を試みて

【背景と目的】癌患者にとって身体的苦痛の他"癌の告知"を受けたり, 疾患に対する不安など精神的苦痛は図り知れない. 病状の進行とともに不安は高まり心理的変化が増大する. その変化を察知, 個別性を重視したケアを行うことが重要となる. 癌患者に対して看護記録だけでは心理的変化までの情報は不十分であり, スタッフの情報共有も満足できるものではなかった. そこでプロセスレコードを施行し情報の共有とケア向上につながるかを検討した. 【症例と方法】乳癌骨転移, 肺転移の52歳の女性. H13年乳癌, 肺転移で告知を受け, 化学療法CTFを施行し肺転移はCRとなった. しかし局所の悪化...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 55; no. 2; pp. 214 - 215
Main Authors 鈴木寛子, 大槻弘美, 四分一淑子, 坂下郁江, 山村有美, 赤坂人美, 原田さとみ, 周藤親子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 2005
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Summary:【背景と目的】癌患者にとって身体的苦痛の他"癌の告知"を受けたり, 疾患に対する不安など精神的苦痛は図り知れない. 病状の進行とともに不安は高まり心理的変化が増大する. その変化を察知, 個別性を重視したケアを行うことが重要となる. 癌患者に対して看護記録だけでは心理的変化までの情報は不十分であり, スタッフの情報共有も満足できるものではなかった. そこでプロセスレコードを施行し情報の共有とケア向上につながるかを検討した. 【症例と方法】乳癌骨転移, 肺転移の52歳の女性. H13年乳癌, 肺転移で告知を受け, 化学療法CTFを施行し肺転移はCRとなった. しかし局所の悪化を認めH15年非定型乳房切断術を, さらに化学療法(タキソール)を施行された. H16年には頸椎転移に対して放射線療法を施行されていた. 疼痛コントロールはデュロテップパッチとボルタレン錠の併用でpain freeとなっていたが, 自動車の運転は禁止されていた. プロセスレコードとして, 患者の心理的変化を明確にするために患者の言動や表情, 看護師の感じた事や患者に話しかけた言葉を詳細にノートに記述した. 【結果】患者は家庭より仕事中心の生活をしており, 当初は「目標が見つからない. 仕事がしたい. 運転がしたい」等, 生活や治療に対しての不安や不満の言葉が聞かれた. また現状の受け入れもできていない事がわかった. しかし会話の時間を増やしたことで, 「家庭の事は放って置きっぱなしだった. ありがたみがわかった. 早く家に帰りたい」等, 家族の話が聞かれるようになり, "家族と過ごす大切な時間を少しでも長くしたい"と望んでいる事がわかった. 【考察】プロセスレコードを用いたことでより深いコミュニケーションが図れ, 患者の心理的変化を察知しそこから導き出された今後のライフプランの決定や実現にうまく関わることができたと考える.
ISSN:1343-2826