8.授乳中に生じた病的乳頭異常分泌への対応

授乳期や授乳中の乳頭分泌は, 両側性, 多孔性であり, 性状は乳汁である. しかし, 時として複数の分泌孔の中で, 一カ所から乳汁以外の分泌がみられることがある. 今回, 血性または潜血反応陽性の分泌(病的乳頭分泌)を示した症例を提示し, それらに対する対応策について検討した. 過去の経験例は4例で, 3例に乳管内視鏡検査(DES)を施行した. 【症例1】32歳, 出産後1年8カ月で授乳中. 左乳頭からの褐色の分泌あり. 細胞診Class3, 超音波検査(US)では径2mmの乳管拡張とそれに連続するcystを認めた. 乳管造影(DG)では長い主乳管と末梢まで拡張した乳管がみられ, 嚢胞様拡張が...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 55; no. 1; p. 57
Main Authors 栗原照昌, 山田勲, 高橋厚, 荒井剛, 東郷庸史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 2005
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Summary:授乳期や授乳中の乳頭分泌は, 両側性, 多孔性であり, 性状は乳汁である. しかし, 時として複数の分泌孔の中で, 一カ所から乳汁以外の分泌がみられることがある. 今回, 血性または潜血反応陽性の分泌(病的乳頭分泌)を示した症例を提示し, それらに対する対応策について検討した. 過去の経験例は4例で, 3例に乳管内視鏡検査(DES)を施行した. 【症例1】32歳, 出産後1年8カ月で授乳中. 左乳頭からの褐色の分泌あり. 細胞診Class3, 超音波検査(US)では径2mmの乳管拡張とそれに連続するcystを認めた. 乳管造影(DG)では長い主乳管と末梢まで拡張した乳管がみられ, 嚢胞様拡張がみられた. 乳管内視鏡(DES)では観察範囲内には隆起性病変はなく, 嚢胞状拡張部位の中枢側乳管上皮のびらんと発赤がみられた. 乳管洗浄細胞診には異型細胞はみられず. 抗生剤と消炎剤の投与で分泌液は乳汁様に変化した. 乳管拡張症+嚢胞であった. 【症例2】36歳. 出産後1年10カ月で授乳中. 右乳頭異常分泌あり. DESは乳管拡張症. 抗生剤と消炎剤投与で病的乳頭分泌液は乳汁様に変化した. 【症例3】34歳. 妊娠7カ月目に右血性乳頭分泌があり, 出産後3カ月から再度血性分泌がみられる, DESは炎症所見を伴った乳管拡張症. 病的乳頭分泌をみた場合, 乳管内乳頭腫や乳管癌の頻度が高くこれらを念頭に置いて精査を進めるべきである. しかし, 授乳中の女性では炎症を伴った乳管拡張か乳管周囲炎も多く存在する. この点で, DESは質的診断に有用であり, 被曝の問題もないためfirst choiceとして行うべき検査である.
ISSN:1343-2826