7.I型家族性アミロイドポリニューロパチーとSCA1を合併する長野県飯山市在住家系の2兄弟剖検例
I型家族性アミロイドポリニューロパチー(type I FAP)では, 髄膜/脳血管にアミロイド沈着を生じるが中枢神経症状を示すことは極めて稀である. 長野県飯山市には小脳失調と錐体路徴候を伴う特異なtype I FAP家系があることが知られていた. その後の遺伝子検索で, ポリニューロパチー症状を示す患者でVal30Met型のトランスサイレチン(TTR)遺伝子変異が, また中枢神経症状を伴う患者ではSCA1遺伝子にCAG repeat延長が確認され, 同一家系内にtype I FAPとSCA1の共存が示された. 今回, この家系に属しtype I FAP症状と中枢神経症状をともに示した2兄弟例...
Saved in:
Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 3; pp. 267 - 268 |
---|---|
Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
2004
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 1343-2826 |
Cover
Summary: | I型家族性アミロイドポリニューロパチー(type I FAP)では, 髄膜/脳血管にアミロイド沈着を生じるが中枢神経症状を示すことは極めて稀である. 長野県飯山市には小脳失調と錐体路徴候を伴う特異なtype I FAP家系があることが知られていた. その後の遺伝子検索で, ポリニューロパチー症状を示す患者でVal30Met型のトランスサイレチン(TTR)遺伝子変異が, また中枢神経症状を伴う患者ではSCA1遺伝子にCAG repeat延長が確認され, 同一家系内にtype I FAPとSCA1の共存が示された. 今回, この家系に属しtype I FAP症状と中枢神経症状をともに示した2兄弟例の剖検病理所見を報告する. 【臨床経過】兄弟はともに40歳で下肢の知覚障害と心伝導障害, および構音障害, 歩行のふらつきで発症. 神経学的に断綴性言語, 四肢腱反射亢進, Babinski徴候, 下肢優位の小脳性運動失調, 四肢遠位の感覚障害を認めた. 消化管機能障害, 起立性低血圧が加わり進行. るいそうを伴い寝たきりとなり, 両者とも51歳で死亡. 全経過11年. 【神経病理学的所見】2例に共通して肉眼的に軽度の小脳脳幹萎縮あり. 組織学的には脊髄小脳路, 下オリーブ核, 歯状核, 横橋線維の変性と, 軽度の橋核神経細胞脱落, Purkinje細胞脱落を認める. 黒質の神経細胞脱落と赤核のグリオーシスが軽度にみられ, 淡蒼球は内外節とも極めて軽度の変性を示す. ポリグルタミン伸張マーカー(1C2)/ubiquitin免疫反応性の神経細胞核内封入体を橋核に多数, 下オリーブ核, 歯状核, 外転神経核, 顔面神経核, 黒質, 淡蒼球外節に少数認めた. TTRアミロイドは大脳, 小脳から脳幹のくも膜下腔と脳表の血管壁および軟膜下組織に広範に沈着していた. 【討論】 山田光則(新潟大学脳研究所病理学分野):これまでのSCA1症例の病変分布と大きく異なる点は見られないと思います. ただし全体に病変が軽くリピート数との関連が考えられます. 核内封入体はDRPLA, Machado-Joseph病等と比べかなり大きいのが特徴と思います. |
---|---|
ISSN: | 1343-2826 |