8.腎腫瘍でインターフェロン療法の意思決定をした患者の個別性を考えたターミナル期の看護援助

【はじめに】ターミナル期の看護援助は, 患者個々により, 社会経済的 宗教的 生育歴等の背景の違いはもちろん, 自覚している痛みの程度や病識, 不安により死への受容の仕方が異なり, 死の迎え方も違うため様々に対応していかなければならない. 今回, 腎腫瘍と告知され, 自ら治療を選択した患者の一事例を取りあげ, 患者の意思への配慮を含め, 個別性を考えた看護について報告する. 【事例紹介】K氏46歳男性左腎腫瘍家族構成;4人暮らし(大学生の長男は休学中)宗教;真光教職業;管理職1回目の入院でリンパ節 多発性骨転移あり, 手術の適応ではないが, ほかに有効な治療がないことや圧迫症状, 発熱, 貧血...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 52; no. 4; pp. 316 - 317
Main Authors 飯野静香, 松村優子, 中野良子, 佐藤愛美, 藤野文代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 2002
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Summary:【はじめに】ターミナル期の看護援助は, 患者個々により, 社会経済的 宗教的 生育歴等の背景の違いはもちろん, 自覚している痛みの程度や病識, 不安により死への受容の仕方が異なり, 死の迎え方も違うため様々に対応していかなければならない. 今回, 腎腫瘍と告知され, 自ら治療を選択した患者の一事例を取りあげ, 患者の意思への配慮を含め, 個別性を考えた看護について報告する. 【事例紹介】K氏46歳男性左腎腫瘍家族構成;4人暮らし(大学生の長男は休学中)宗教;真光教職業;管理職1回目の入院でリンパ節 多発性骨転移あり, 手術の適応ではないが, ほかに有効な治療がないことや圧迫症状, 発熱, 貧血の改善には繋がることから根治的とはならないが, 手術は可能であると, 主治医より説明された. 患者自身は手術しない方向でインターフェロン療法を選択し, 自己注射を覚え外来followとなった. その後二ヶ月弱で, 左胸水貯留の為, 呼吸困難出現し再入院となる. 疼痛に対してはソセゴン錠3T3Xより開始し, MSコンチン60mg/day内服にてコントロールされている. 【看護問題】(二回目入院時)#1胸水貯留に伴う呼吸機能の変調 #2多発性骨転移に伴う疼痛 #3腫瘍熱とインターフェロンに伴う高体温 #4入院や疾病に伴う役割遂行の変調【考察】身体 精神 社会 経済 宗教 霊的な側面からアセスメントし, まず患者を全人的にとらえ患者が`どうしたいのか?'ということを第一に考えた. 治療方針の決定をはじめとして, 疼痛コントロールや酸素投与の自己管理において, 常に患者の意思を尊重し医師 看護者間が一体となってADLが維持できるよう対応し, 週末の外泊や早期退院に向けて援助していった. また, K氏は, 職業は工場長という責任ある立場であり, 家庭ではまだ大学生と高校生の息子の父親としての役割がある. これらから考えても, インターフェロン療法が決して諦めて選択された治療法ではなく, K氏独自の宗教的観念や意思があっての選択と理解し, 患者が治療意欲を持ち, 生きてゆく自信に繋がるような働きかけをした. このような看護は, 患者が自分らしくターミナル期を過ごせるようにといったものであり, 個人の価値観を配慮した支援であると言える. K氏からは「早く良くならなきゃね. 」という言葉も聞かれ, 改めて, 患者の前向きな気持ちを支援してゆく必要性が示唆された. 【おわりに】以上の結果から, 患者の宗教的信念や意思決定を尊重した個別的な関わりができたと考える. K氏の場合, ADLの自立や早期退院に向けて援助したことで, 患者が自分らしくターミナル期を過ごせたと考える. 今後, 患者の抱える全人的苦痛を適切に捉えて, アセスメントし, 意思決定を尊重した看護援助に繋げていき, さらに研究を進めていきたい.
ISSN:1343-2826