7. 病名告知に関する県内医療機関アンケート調査の結果
【目的】病名・病状説明(いわゆる告知)に関する群馬県内医療機関の意識調査を目的としてアンケート調査を行った. 【方法】精神科単科病院を除く県内主要医療機関120施設にアンケートを郵送し, 各施設の院長, 副院長あるいは医療局長などの診療を統括する医師に回答を依頼した. 【結果】県内120病院に郵送, 73施設(60.8%)から回答を得た. 「病名・病状説明(いわゆるがん告知)」に関するアンケート調査の結果 1. 貴施設ではがん患者に対する病名告知・病状説明について [16%(12)]施設として積極的に告知・説明を実施する方向で指導している [44%(32)]施設としての指導はしていないが, 告...
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Published in | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 50; no. 4; pp. 407 - 409 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北関東医学会
2000
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Summary: | 【目的】病名・病状説明(いわゆる告知)に関する群馬県内医療機関の意識調査を目的としてアンケート調査を行った. 【方法】精神科単科病院を除く県内主要医療機関120施設にアンケートを郵送し, 各施設の院長, 副院長あるいは医療局長などの診療を統括する医師に回答を依頼した. 【結果】県内120病院に郵送, 73施設(60.8%)から回答を得た. 「病名・病状説明(いわゆるがん告知)」に関するアンケート調査の結果 1. 貴施設ではがん患者に対する病名告知・病状説明について [16%(12)]施設として積極的に告知・説明を実施する方向で指導している [44%(32)]施設としての指導はしていないが, 告知・説明は推進すべきものと考えている [33%(24)]施設としての方針を定める必要はないと考え, 各診療科の科長や担当医の考えに任せている [7%(5)]その他 ・早期がんには積極的に告知するよう指導 ・患者の性格家族のバックアップ体制, がんの進行度などを総合して判断 2. 一般論として, がんの告知に際しては [49%(36)]「がん」という言葉を使って患者にはっきりと理解させるほうがよい [32%(23)]「がん」という言葉は使わず, 曖昧な表現でショックを与えないようにしたほうがよい [19%(14)]その他 ・ケースバイケース ・高齢者には曖昧に ・早期はがんと, 末期には曖昧な表現で 3. 個々のケースで実際に告知をするかどうかの決定については [27%(20)]担当医の総合的判断を優先する [47%(34)]家族と担当医の相談の結果を優先する [23%(17)]患者本人の希望や考え方を優先する [3%(2)]その他 ・患者と家族の両者の考え方を総合的に判断する ・上記全てを総合して判断 4. がんの告知や病状の説明についての患者本人の希望や考え方を知るための具体的な方策(例えば初診時のアンケート調査や聞き取りなど)を [14%(10)]実施している [82%(60)]実施していない [4%(3)]その他 ・科によっては実施している 5. 診療情報開示(カルテ開示)の動きが始まっていますが [29%(21)]がんの告知も患者への診療情報開示の一環ととらえて実施すべきである [68%(50)]がんの告知は診療情報開示とは別問題であり, 別個に判断すべきである [3%(2)]その他 ・医療の主人公は患者, 医療を共同作業ととらえ積極的に進める議論を始めている ・医療訴訟に発展するケースもあり, 法的に決めた方がよい 6. その他, 貴施設でのがん告知に関する取り組みやご意見がありましたらお書き下さい ・がん告知は“狭義の医療”の範疇に属さない, 人生観・哲学の問題 ・告知しないことが本人の権利の妨げになることはあきらか, しかし家族の同意なしの告知は困難 ・がん告知もカルテ開示もインフォームドコンセントの一環と理解すべき ・カルテ開示もあり, 治療法の選択に対して真実告知の方向 ・がん告知の方向だが, 告知できない場合にカルテ開示ができないことを本人にどう説明するか問題 ・初診時の意向調査はうのみにはできない 早期がんと末期がんを同一に論じるのは無理がある ・将来的には全例告知の方向と考えるが, 知りたくない権利も尊重すべき【考察】群馬県内においては, 全般的な傾向として病名・病状説明(いわゆるがん告知)[以下告知]に関しては消極的な姿勢の医療機関が多い. 設問1に対して, 告知を施設として推進していると回答した施設は16%に止まり, 具体策を講じていないか, 主治医に任せている施設が大多数である. 設問2では, がんという言葉を使わずに曖昧な表現で説明しても, それをがん告知と考えている施設が32%もあることが明らかになった. しかし, これでは手術の内容や予後の説明にまではふみこめず, 告知の本来の目的である患者の自己決定権の尊重にはつながらないものと思われる. 設問3の主眼は, 告知するかどうかを最終的に決めるのは, 主治医か, 家族か, 本人かということであるが, 結果は家族の意見を重視する考え方が半数ちかくあった. しかし, 主治医と家族が相談すれば, その多くは告知しない方向での決定がなされるものと思われ, 患者の意志に反して告知がなされないケースが多いであろうことが伺われる. 設問4の結果からは, 本人の告知に対する希望や考え方を知るための具体策を実施している施設が非常に少ないことが判明した. 本人に自分の意志を表明する機会を与えることは, 告知を決める際の重要なステップであるとの認識をもつことが必要である. 設問5の結果では, カルテ開示と告知が別問題であると考えている施設が68%にのぼり, 病名告知や病状説明が患者本人に対する診療情報開示の一環である, との認識がいまだ薄いことが明らかとなった. 仮に虚偽の説明を受けている患者がカルテ開示を請求した場合にどう対処するかをこれらの医療機関は考えておく必要があるだろう. |
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ISSN: | 1343-2826 |