1. 高Ca血症を合併した縦隔原発横紋筋肉腫と考えられた1例

今回我々は, 高Ca血症を合併した縦隔原発横紋筋肉腫と考えられた1例を経験したので報告する. 症例は50歳男性, 主訴は胸部Xp異常. 1995年の健診の胸部Xpでは異常は指摘されなかった. 胸部Xpで異常影を認め, 肺炎の診断で抗生剤投与にて症状は軽快した. その後も胸部異常陰影が消失しないため, 胸部CTを施行したところ前縦隔に脂肪濃度の腫瘤影を認めた. この時は増大傾向がなく, 経過観察となっていた. 10月再度胸部CTを施行したところ増大傾向がみられたため, 精査のため当科入院となった. 入院時検査所見では, 貧血や炎症所見は認めず, 腫瘍マーカーは正常であった. 血液ガス分析ではPa...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 49; no. 1; p. 55
Main Authors 佐藤真人, 田島俊児, 前野敏孝, 前野有里, 塚越正章, 須賀達夫, 山洞善恒, 永井良三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 1999
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Summary:今回我々は, 高Ca血症を合併した縦隔原発横紋筋肉腫と考えられた1例を経験したので報告する. 症例は50歳男性, 主訴は胸部Xp異常. 1995年の健診の胸部Xpでは異常は指摘されなかった. 胸部Xpで異常影を認め, 肺炎の診断で抗生剤投与にて症状は軽快した. その後も胸部異常陰影が消失しないため, 胸部CTを施行したところ前縦隔に脂肪濃度の腫瘤影を認めた. この時は増大傾向がなく, 経過観察となっていた. 10月再度胸部CTを施行したところ増大傾向がみられたため, 精査のため当科入院となった. 入院時検査所見では, 貧血や炎症所見は認めず, 腫瘍マーカーは正常であった. 血液ガス分析ではPaCO2 50. 8Torrと上昇していたが, 呼吸機能検査では閉塞性傷害を認めなかった. 胸部単純写真では, 右前縦隔に巨大な腫瘤影を認めた. 胸部CTでは, 右房, 右室に接して脂肪濃度の腫瘤影を認めた. 房室間孔付近の心膜が描出されず, 心膜浸潤が疑われた. MRIではT1強調画像でhigh intensity, fat supressionで抑制された. 房室間孔付近での心膜浸潤の有無ははっきりしなかった. 経食道エコーでも房室間孔周囲の脂肪組織と腫瘍との境界がはっきりせず, 心膜浸潤の有無は判定できなかった. このためイマトロンCTを施行したところ房室間孔周囲の脂肪組織と腫瘍との間に心膜が明瞭に描出され心膜浸潤はないと判断した. 腫瘍摘出術を施行したところ, 心膜への浸潤は認めず胸腺組織を含めて全て摘出された. 組織型は脂肪腫で肉腫部分は認めなかった. 縦隔原発の脂肪腫は, 全縦隔腫瘍中の0. 24~0. 36%と比較的稀な疾患である. 発生部位は前上縦隔が最多であるが, 中縦隔, 後縦隔での報告もみられる. 治療は切除を行う. またイマトロンCTは超高速CTの実用機であり, 電子ビームを用いて撮像時間を短かくしたCTである. 心臓などの動きのある臓器の撮影や, 関節を動かしながらの撮影などに適している. 呼吸器領域では, (1)呼吸による動きを観察することで, 胸壁や大血管との関係を観察できる点, (2)小児や呼吸停止のできない重症患者でも鮮明な画像が得られる点, (3)心臓, 大血管の動きのアーチファクトがないため, 縦隔病変の描出が鮮明である点などの利点があり今後呼吸器領域への応用が考えられている.
ISSN:1343-2826