3. 頻回の気管支鏡下肺胞洗浄及びアンブロキソール投与が有効であった肺胞蛋白症の1例

症例は51歳女性. 平成7年3月頃より咳嗽・労作時息切れが出現し, 徐々に増悪したため同年5月当院外来受診. 胸部X-P, 胸部CT上肺胞蛋白症が疑われ, アンブロキソール(ムコソルバン)の投与開始し一時は症状軽快. しかし平成9年初め頃より再度症状増悪し, 精査加療目的にて平成9年2月4日当科入院. 身体所見では両下肺野に捻髪音を聴取. 血液検査ではLDH・CEAの高値を認め, 血液ガスにて低酸素血症, 呼吸機能検査では拡散能の低下を認めた. 入院後行った経気管支肺生検(TBLB)では肺胞内のPAS陽性物質の沈着, 腫大化した肺胞II型細胞が認められ肺胞蛋白症と診断. 治療は経気管支的に1回...

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Published inTHE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 48; no. 3; p. 238
Main Authors 宇津木光克, 福田玲子, 田谷禎増, 山田衛, 稲垣雅春, 藤井裕介, 吉田カツ江
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 北関東医学会 1998
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Summary:症例は51歳女性. 平成7年3月頃より咳嗽・労作時息切れが出現し, 徐々に増悪したため同年5月当院外来受診. 胸部X-P, 胸部CT上肺胞蛋白症が疑われ, アンブロキソール(ムコソルバン)の投与開始し一時は症状軽快. しかし平成9年初め頃より再度症状増悪し, 精査加療目的にて平成9年2月4日当科入院. 身体所見では両下肺野に捻髪音を聴取. 血液検査ではLDH・CEAの高値を認め, 血液ガスにて低酸素血症, 呼吸機能検査では拡散能の低下を認めた. 入院後行った経気管支肺生検(TBLB)では肺胞内のPAS陽性物質の沈着, 腫大化した肺胞II型細胞が認められ肺胞蛋白症と診断. 治療は経気管支的に1回につき500ml~700mlの肺胞洗浄を左右交互に区域支を変えて計6回施行し, アンブロキソールの内服と吸入を併用した. その結果自覚症状・PO2・拡散能・胸部X-P共に改善. 退院後はアンブロキソール内服で経過をみているが, 自覚・他覚所見とも更なる改善をみている. 肺胞蛋白症は脂質を多量に含む蛋白様物質(肺サーファクタント)が肺胞腔内に充満する原因不明の疾患である. 治療法としては気管支肺胞洗浄が唯一の方法といわれているが, 患者に対する侵襲が大きく, また約4分の1は自然軽快することから, アンブロキソール投与は第一段階の治療法としてまず試みるべきであると思われた.
ISSN:1343-2826