III-3 保健婦教育における精神保健の学び-社会復帰を中心に

学生の"精神障害者の社会復帰"に関する学びについてレポートなどから整理し, 今後の教育の在り方について検討した. その結果, 実習後の感想レポートでは, 「地域住民とのかかわり」に関するものが9割と多く, 次は「精神障害者の理解」「社会復帰施設の役割と機能について」がそれぞれ32人(80%)で, 自分自身の偏見の問題について記述している学生が12人いた. 実習の施設別では, 精神障害者共同作業所での記述が多くあった. 学年末の学習成果に関する記述では, 「住民の理解の必要性」が一番多く(73%), 続いて「精神障害者を取り巻く現状の厳しさ」, 「精神障害者の理解」と「保健婦...

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Published inこころの健康 Vol. 15; no. 1; p. 84
Main Authors 奥山則子, 角田あゆみ, 安田美弥子, 杉本正子, 高石純子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本精神衛生学会 2000
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Summary:学生の"精神障害者の社会復帰"に関する学びについてレポートなどから整理し, 今後の教育の在り方について検討した. その結果, 実習後の感想レポートでは, 「地域住民とのかかわり」に関するものが9割と多く, 次は「精神障害者の理解」「社会復帰施設の役割と機能について」がそれぞれ32人(80%)で, 自分自身の偏見の問題について記述している学生が12人いた. 実習の施設別では, 精神障害者共同作業所での記述が多くあった. 学年末の学習成果に関する記述では, 「住民の理解の必要性」が一番多く(73%), 続いて「精神障害者を取り巻く現状の厳しさ」, 「精神障害者の理解」と「保健婦の役割」の順であった. そして, 全体として社会復帰の援助の中で大切なことは, 「地域や家族が精神障害者を理解しながら」(26人), 「精神障害者の意思を尊重し」(16人), 「連携を取りながら」(12人), 「社会生活技術の習得を援助」(11人), することであると回答していた. 学生の記述は, 実習先の事業内容や施設の機能, そして保健婦や施設の職員が説明してくれた, 日ごろ大事にしていることや苦労して来たことなどについてが多かった. また, 保健所実習の中で精神保健の領域を選択した学生(8人)と選択しなかった学生(32人)について, レポートや学習成果の記述内容について比較してみたが, 記述内容や記述量に違いは見られなかった. 記述内容の違いは, 学生のいままでの生活の中で身近に精神障害者がいたか否かや, 実習時の精神障害者との実際の交流体験の有無の違いによるものが大きかった. 社会復帰についての学習では, 単なる講義や見学実習だけではなく, 学生が精神障害者と共に過ごせる場面づくりと, その事業や施設のプロセスや現実の課題について解説してもらうことが大切であるということが明らかになった.
ISSN:0912-6945