分子生物学的手法を用いたCryptosporidiumの種および遺伝子型鑑別法の比較と文献的考察

Cryptosporidum(クリプトスポリジウム)は人と動物の腸粘膜上皮細胞に寄生し急性の水様下痢をもたらす原虫で, 宿主への感染型であるオーシスト(患者の糞便中に排出される)は水道水中の残留塩素濃度では死滅しないことから, 水系感染症の原因としても知られています. 本原虫の分類はオーシストの形態学的特徴, 寄生部位, 由来宿主などに基づいてなされ, これまでに8種類が確定種として報告されてきました. しかしながら, 人と動物由来株の遺伝子学的解析から本原虫は遺伝的に多様であり, 独立種の中には複数の遺伝子型の存在が明らかとなってきました. また, 形態学的に区別できない種または遺伝子型が本...

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Published in生活衛生 Vol. 48; no. 5; pp. 292 - 293
Main Authors 阿部仁一郎, 木俣勲, 井関基弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 大阪生活衛生協会 2004
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Summary:Cryptosporidum(クリプトスポリジウム)は人と動物の腸粘膜上皮細胞に寄生し急性の水様下痢をもたらす原虫で, 宿主への感染型であるオーシスト(患者の糞便中に排出される)は水道水中の残留塩素濃度では死滅しないことから, 水系感染症の原因としても知られています. 本原虫の分類はオーシストの形態学的特徴, 寄生部位, 由来宿主などに基づいてなされ, これまでに8種類が確定種として報告されてきました. しかしながら, 人と動物由来株の遺伝子学的解析から本原虫は遺伝的に多様であり, 独立種の中には複数の遺伝子型の存在が明らかとなってきました. また, 形態学的に区別できない種または遺伝子型が本来とは異なった宿主にも見出されています. このことから, オーシストの形態学的観察による種の同定は困難で, 遺伝子型や種の正確な同定と感染源を解明するためには, 遺伝子レベルでの検査が必要となっています. これまでにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法に基づいた本原虫の鑑別法は幾つか報告されていますが, 検査方法は統一されていません.
ISSN:0582-4176