NO.18 胃十二指腸動脈の破綻を伴い外科的止血術を要した十二指腸潰瘍の一例

症例は30歳代女性. H23年8月頃より嘔気・食欲不振を生じ, SMA症候群を疑われていた. 11月中旬に黒色便を認め, 当院ERを受診. 入院後の第6病日に, タール便・Hb低下(10.2から6.3g/dl)を生じたが, 経鼻での上部消化管内視鏡検査(EGD)では, 十二指腸球部前壁に憩室様陥凹を見るものの出血源は同定されなかった. 第7病日のEGD再検時には, 憩室様陥凹部に凝血付着を認め, 同部を出血源と考えクリップ・エピネフリン生食局注等を行ったが, 活動性出血による血圧低下を見た. 一時止血を得たものの同日夜に再度ショック状態となり, 外科的止血術を行った. 球部後壁の陥凹は潰瘍底に...

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Published in山口医学 Vol. 60; no. 6; p. 278
Main Authors 稲益良紀, 中鉢龍徳, 佐伯俊宏, 上村吉生, 古谷卓三, 柳井秀雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2011
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Summary:症例は30歳代女性. H23年8月頃より嘔気・食欲不振を生じ, SMA症候群を疑われていた. 11月中旬に黒色便を認め, 当院ERを受診. 入院後の第6病日に, タール便・Hb低下(10.2から6.3g/dl)を生じたが, 経鼻での上部消化管内視鏡検査(EGD)では, 十二指腸球部前壁に憩室様陥凹を見るものの出血源は同定されなかった. 第7病日のEGD再検時には, 憩室様陥凹部に凝血付着を認め, 同部を出血源と考えクリップ・エピネフリン生食局注等を行ったが, 活動性出血による血圧低下を見た. 一時止血を得たものの同日夜に再度ショック状態となり, 外科的止血術を行った. 球部後壁の陥凹は潰瘍底に胃十二指腸動脈の破綻した潰瘍であった. 近年, 消化性潰瘍よりの出血の大部分では内視鏡的止血法により止血が得られているが, 径1mmを越える露出血管を有する場合や, 重篤な基礎疾患を伴う場合には止血困難とされている. 本例での止血困難要因等について考案し, 報告する.
ISSN:0513-1731