3. プロテオミクス解析技術を用いた牛肉アレルギー抗原の解析

【目的】食物アレルギーは食物抗原に対する即時型アレルギーであるが, しばしば食品間で交叉反応を示す. 牛肉アレルギーは, 牛肉のみならず豚肉などとも交叉反応してアレルギー症状を示すことが臨床的に知られている. 本研究は, 牛肉アレルギー患者の血清中抗原特異的IgEによって認識されるタンパク質を同定し, 他の肉類との交叉反応を検討することを目的とした. 【方法】[(1)1次元SDS-PAGEによる抗原の解析] 牛肉の摂取により, 蕁麻疹などのアレルギー症状を示す7例の患者を対象とした. 市販の牛肉を破砕し, 粗抽出液を調製した. 粗抽出液をSDS-PAGEにて展開し, 患者血清を用いたブロットを...

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Published in山口医学 Vol. 60; no. 4; p. 144
Main Authors 高橋仁, 千貫祐子, 森田栄伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2011
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ISSN0513-1731

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Summary:【目的】食物アレルギーは食物抗原に対する即時型アレルギーであるが, しばしば食品間で交叉反応を示す. 牛肉アレルギーは, 牛肉のみならず豚肉などとも交叉反応してアレルギー症状を示すことが臨床的に知られている. 本研究は, 牛肉アレルギー患者の血清中抗原特異的IgEによって認識されるタンパク質を同定し, 他の肉類との交叉反応を検討することを目的とした. 【方法】[(1)1次元SDS-PAGEによる抗原の解析] 牛肉の摂取により, 蕁麻疹などのアレルギー症状を示す7例の患者を対象とした. 市販の牛肉を破砕し, 粗抽出液を調製した. 粗抽出液をSDS-PAGEにて展開し, 患者血清を用いたブロットを行い, anti-human IgE抗体を用いて反応する抗原を可視化した. [(2)2次元電気泳動] 粗抽出液を硫酸アンモニウムにて分画し, 患者血清を用いたウエスタンブロット解析を行い, 主要な抗原は20-40%濃度間で沈殿することを確認した. 硫酸アンモニウムによる粗分画中のタンパク質は, pH3-8の等電点電気泳動と7.5%SDS-PAGEから構成される二次元電気泳動にて展開した後, PVDF膜に転写し, 患者血清, および, anti-human IgE抗体を用いたウエスタンブロットに供した. 全タンパク質を蛍光色素で可視化した2次元電気泳動ゲルから, 患者血清中IgEが反応したタンパク質のスポットを切り抜き, トリプシン消化した後, 以下の質量分析を行った. [(3)質量分析による抗原の同定] トリプシン消化によって得られたペプチドの質量は, マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization, MALDI)を用いて測定した. タンパク質の同定は, プロテアーゼ消化によって生じたペプチドの質量(MS)とその質量リストをデータベース中の理論値と照合する「ペプチドマスフィンガープリンティング法」, および, 質量分析計内部で各々のペプチドを断片化し, 生じた断片の質量(MS/MS)から部分アミノ酸配列を推測し, データベース中のアミノ酸配列と照合する「シークエンスタグ法」を用いた. 【結果】1次元SDS-PAGEによるウエスタンブロットの結果, 患者血清中抗原特異的IgEは, 220kDaと140kDaのタンパク質と強く反応した. 2次元電気泳動によって展開したタンパク質に対するウエスタンブロットの結果, 患者血清中IgEと反応したタンパク質は, pI5からpI6の間に位置する220kDaと140kDaのタンパク質であった. 両タンパク質に対するペプチドマスフィンガープリンティング解析, および, シークエンスタ
ISSN:0513-1731