NO.10 ラット慢性疼痛に併発する感情障害におけるpERK活性を指標とした神経回路網解析

細胞内シグナルMAPKsファミリー, ERKおよび脳由来神経栄養因子BDNFは, 中枢神経系で協働し神経可塑性を引き起こし, 痛覚過敏, 感情・学習・記憶障害への関与が注目されている. また近年, ヒトfMRI画像診断からもこれら機能に関与する神経連絡網の解析がなされつつある. そこで, ラット慢性疼痛で併発する感情障害モデルにおいて, 痛覚-認知-情動系に関する微細構造におけるpERK/c-FOS活性をTrkB分布と関連させ, その神経回路網の解析を試みた. SDラット慢性疼痛(CCI)モデルを用い, 持続的熱性痛覚過敏状態(Planter test)及びうつ・不安様行動(Forsed-sw...

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Published in山口医学 Vol. 59; no. 5/6; p. 245
Main Authors 石川浩三, 安田聖子, 福原佳世子, 叶辰宣, 香川慶輝, 三根由起子, 佐々木宏典, 石川敏三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2010
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ISSN0513-1731

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Summary:細胞内シグナルMAPKsファミリー, ERKおよび脳由来神経栄養因子BDNFは, 中枢神経系で協働し神経可塑性を引き起こし, 痛覚過敏, 感情・学習・記憶障害への関与が注目されている. また近年, ヒトfMRI画像診断からもこれら機能に関与する神経連絡網の解析がなされつつある. そこで, ラット慢性疼痛で併発する感情障害モデルにおいて, 痛覚-認知-情動系に関する微細構造におけるpERK/c-FOS活性をTrkB分布と関連させ, その神経回路網の解析を試みた. SDラット慢性疼痛(CCI)モデルを用い, 持続的熱性痛覚過敏状態(Planter test)及びうつ・不安様行動(Forsed-swimming test, Open-field test)を確認した後, 4%PFAで還流固定し, 脳・脊髄標本をpERK/c-FOSに対する免疫組織染色に供し局所部位の陽性細胞を評価した. その結果, CCI後にpERK/c-FOS活性は求心性痛覚伝導路(spinal cord, Thalamus, sensory Cx., PAG)と情動系(Cinglate Cx., Insula, Hypothalamus, Amygdala)の領域で認められ, ヒトfMRI画像の結果に符号した. また, BDNF誘導剤がpERK/c-FOS活性の抑制作用を介し, 症状を軽減することも判明し, 感情障害におけるERK, BDNFの関与が示唆された.
ISSN:0513-1731