NO.9 難治性疼痛における脊髄神経栄養因子BDNFの果たす役割

難治性疼痛では最近, 脊髄神経-グリア細胞の活性化, シグナルの他, 神経栄養因子(BDNF)の脊髄神経伝達への著しい修飾が注目される. しかし, 急性期から移行期に, その果たす役割は一定した見解がない. そこで, ラット急性痛(Mustard oil;MO)および慢性痛(CCI)モデルにおいて, BDNF関連阻害剤による疼痛反応の修飾と脊髄組織の免疫染色(c-FOS, pERK)より検討した. その結果, MO誘発疼痛はMEK, TrkB阻害剤で抑制された. しかし, CCI慢性疼痛では介在ニューロンの障害が起き(脱抑制), BDNF誘導剤が疼痛を抑制し, その作用はTrkB阻害剤で拮抗さ...

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Published in山口医学 Vol. 59; no. 5/6; pp. 244 - 245
Main Authors 井田唯香, 石川浩三, 安田聖子, 津野晃正, 蓑田誠治, 石川敏三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2010
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ISSN0513-1731

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Summary:難治性疼痛では最近, 脊髄神経-グリア細胞の活性化, シグナルの他, 神経栄養因子(BDNF)の脊髄神経伝達への著しい修飾が注目される. しかし, 急性期から移行期に, その果たす役割は一定した見解がない. そこで, ラット急性痛(Mustard oil;MO)および慢性痛(CCI)モデルにおいて, BDNF関連阻害剤による疼痛反応の修飾と脊髄組織の免疫染色(c-FOS, pERK)より検討した. その結果, MO誘発疼痛はMEK, TrkB阻害剤で抑制された. しかし, CCI慢性疼痛では介在ニューロンの障害が起き(脱抑制), BDNF誘導剤が疼痛を抑制し, その作用はTrkB阻害剤で拮抗された. また, MO誘発疼痛での脊髄c-FOS, pERK増加はTrkB阻害剤で抑制されたが, 慢性疼痛ではBDNF誘導剤でpERK増加は抑制された. したがって, 急性痛の脊髄シナプスではglia由来BDNFがpERKを活性化し, 一方慢性疼痛では, BDNF不足が細胞障害を来たし疼痛が維持される, いわゆる2面性の役割が初めて判明した.
ISSN:0513-1731